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Book Guide for Rusties 1997

No.
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A: 殿堂入り 5: 読め, 4: まあ面白い, 3: お好きに, 2: つまらん, 1: 金の無駄

12月

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「教科書が教えない小林よしのり」
オウム真理教で ノリノリだった1996年。「SPA!」誌上ではよくわからないまま、 宅八郎と小林よしのりの戦いが 続いていた。「噂の真相」や「宝島30」なども読んでいたのでなんとなく その外形はつかんでいたものの、この本を読んで、宅八郎側からではあるが、 やっと経過がわかる。アイドルハチローであるところの宅八郎は 恐い人なのでわかるが、しかし元SPA!の編集長がここまで言っているのに驚いた。 小林よしのりが面白くなくなったのは、「おれは「ゴーマン」ではなく正論を言っているのだ」という雰囲気になったころ、オウム真理教一斉捜査のあたりだが、 そんな雰囲気になってしまったのもうなずける。一般読者であるわたくしには 真実はわからなし、どうでもいいが、宅八郎は逃げないが、小林よしのりは 明らかに逃げているのが、誌面を見ているだけでもわかったので、どっちかと 言うと宅八郎に軍配を上げたい。田中康夫は偉い。

「ののちゃん(2)」
少年マガジンの設楽先生もすばらしいが、藤原先生もあいかわらずすばらしい。 これに載っている神戸の中学生が捕まったあとの漫画、ほっとした覚えがある。

「ガメラ監督日記」
表紙のかっこよさに惹かれる。学生時代の バイト先(ウルトラセブンのLD発売日 が話題になる会社であった)である日「こんどのガメラは凄いよ」という話題になった。 無知な私が聞くと「何しろガメラが大きい」と言われた。でその技術的側面などを 教えていただいたのだが、この本を買ってから読む前の予習として 「ガメラ」のビデオを借りて見た(ふつうは逆)。確かにすごい大きく見える。 ギャオスがビルに激突するシーンや、東京タワーで佇むあたり、見上げるカットなど、 興奮してしまった。ということで、監督日記を読んだのだが、いきなり予算との 戦いの話で、どこまでできるかという毎日が続く。ガメラは子どもの味方であるとか、 古代人の作ったものである、などの解釈が大映と食い違い、監督を降りる降りないの 論争しているあたり、このへんの真剣さに感動した。

「新ニッポン百景 '95〜'97」
あの(衣食足りても知り得ぬ「礼節」への道標として) 「新ニッポン百景」が帰ってきた。 って週刊ポストに連載していた後半。写真と矢作俊彦のあの文章で、 日本のさまざまな景色を語る傑作シリーズ。 前回の本のバブルのお祭り騒ぎの余韻と 違って、今回はかなり情けなさ漂う。 このシリーズ読むと、竹下登元首相による「ふるさと創政一億円」が 全国各地に与えたヴィジョンの無さの伝播は、まさしく(自分を含めた)ニッポン を具現してしまったことがよくわかる。 沖縄海洋博の跡地、不法係留のプレジャーボート、 防衛庁の電波塔、幕張の砂浜の 看板、思わず見入ってしまう写真に、矢作俊彦の文章がよく似合う。 本人は望まぬだろうが、いくつかある誉めている文章は、いまいちノれないのであった。 面白かった。

「ケンとエリカ」
江口寿史の新刊。もう10年くらい前の週刊漫画アクションに載っていた 「エリカの星」と「ボクサー・ケン」を一つの単行本にしただけ。でも たしかに新刊で、本人もあとがきで書いている通り、もう本にできる ストックはないそうだ。「COMIC CUE」にも結局一度も漫画書いてないし、 もう復帰しても野沢直子みたいになってしまわないか心配だ。と思ったが 「COMIC CUE」にマンガを書くと言ってるが、今度は本当か。

「DOUGHNUTS BOOKS(33)失禁園」
いつも通り。今回はOL三宅さんがよろしい

「YOUNG & FINE」
高校生の家に下宿する新任の若い女の先生という山本直樹のいつものえっちな 漫画。よくわからんまま終わってるけど、この人の漫画が描く田舎のどうしようも ない感じだけは好きだ。

「石神伝説」
とり・みきシリアス伝奇コミック漫画。日本にちらばる神聖なる石をめぐる怪事件。 キーは美少年。世の中に公表されていない中自衛隊も戦いを続ける。それに対抗できる のはこれも神聖なる刀剣で、こいつを持っている自衛隊員が実は物部氏の末裔という、 よくわかんない話。

「COMIC CUE VOL.4」
テーマはコラボレーションで、京極夏彦 + とりみき、 喜国雅彦夫妻なんてのから荒俣宏 + 古屋兎丸などというマニアックな組み合わせまで、 いろんな作品が載っているんだが、今年のぜんぜん面白くない。唯一笑ったのが和田ラジヲ + 俵万智の「図解チョコレート革命」であった。江口寿司責任編集の看板が下りた らしいけど、これまでのが粒ぞろい凄すぎたのか。でも「少年マガジン」の方が 粒ぞろいってのは情けない。

「大和、帰還セズ」
なぜかコンビニ常備の日本出版社の漫画。p.82あたりの絵、しりあがり寿の へんな絵みたいで、ギャグマンガかと思ってしまうが、本人マジで大和の 悲劇を描いているのである。コンバットコミックなどというそっち系の マニアのみなさんの雑誌に載っている漫画だけあって、細部や設定は やたらリアルだが、しかしこの絵はないだろう

「あなたも女優になろう」
サブタイトルは「素敵な女性になるためのヒント」。つかこうへいが、 女優になりたいとう浜松の早苗ちゃんに語る、という形式の 女優だけではなく役者について書かれた本。面白い。 かわいい、美しい女性はたくさんいるが、すばらしい女優になれる人は 少ない、ということを「女優さんには体力が必要です」「女優さんには 毒の華が必要です」「役者さんには狂気がなければいけません」などの サブタイトルとともに語られる。つか流の諧謔も含みながらも、 「つかさん、才能も無いのも才能のうちです」という今日も台詞のない 役者を続けるトクさんの話、先輩に彼女を取られ、焼き肉が食べれない 町田くんがCHANGE&ASKAを好きになった話など、タイトルとはほとんど 関係ない内容だが泣けた。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(105)」
老人ソフトの話(以前もあったような)面白い。この巻の話(というか最近)、 無理にでもオチをつけることが無くなってきた気がする。

「ぼのぼの(15)」
久しぶりに買う新刊ぼのぼの。 会社の開発マシンの上にはシマリス君がいつもこちらを向いて「いぢめる」と 首をかしげているのだが、それはさておき、 「ああ夏だなあ」と思った瞬間ぼのぼのは 走るらしいが、このシリーズ楽しかった。しかし、シマリスくんずいぶん 強い子になった。

「大震災名言録」
主に被災者自身たちが語っていた震災ジョークを集めたもの。 基本的に大笑いするたぐいではなく、ちょっとした(新聞にだって載せられる) ユーモア(笑えない)を集めたもの。笑い飛ばすは言い過ぎ。 ただわしきたくんも 書いているが、いざというときここで笑いのネタにされているアホな人 みたいなことをしないように(しちゃうんだろうな)。
東海地震はいつ来るのだ。


11月

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「戦空の魂(1)-(4)」
なんだか偶然手に取ったら戦争漫画だった。日本軍の軍用機の一つ一つに 物語をつけたもの。面白い。もし今戦争が起こったら、このプロペラ飛行機の 時代の戦争のように、物語が生まれるのだろうか。多かれ少なかれ人間が関わって いる間はそれは人間くさいものであり続けるのだろうか。スイッチ・オン。

文庫版「恨ミシェラン(上)(下)」
あの恨ミシェランが文庫になって帰ってきた。引越しの際に売ってしまったのを 悔いていたので、もちろん買う。たくさんの店がすでに無くなっているのが なかなかわびしい話だ。とにかく評判の店に行ってかみつきまくる西原りえぞう 先生の漫画が楽しい。神足氏の文章はかなり波があるが実は同じくらいかみついて いるときが面白い。傑作。

「われ笑う、ゆえにわれあり」
土屋賢二のシリーズの多分最初のやつ。 最近出てるやつの方が走っていて 面白い。 とはいえこれだけひねくれた文章はなかなか書けない。 外見のよい男は「他人にふりまわされない」と評価され、 外見の悪い男は「がんこな」と評価され、 などの例をあげて、 どんな内面を持っているかは、何をするかによって決まるのかではなく、 結局は容貌で決まるのだ、と結論づけるあたりけっこう笑える。 なお著者は違うが「ソフィーの世界」は世界的ベストセラーとなった。

「風俗の人たち」
昨年の極私的ノンフィクションベスト1の 「AV女優」の著者による、 風俗の方々のレポート集ということで買う。なんと筑摩から。 オーソドックスなAV女優、ストリップから女装プレイ、個室割烹、ピンサロなど さまざまな性風俗に関わる人々についてのルポ。経営者の人たちは本当に 経営者で単語置換すればふつうの中小企業の経営者の話と区別つかないのでは、 と気づく。面白い。 ちなみに写真は一枚も無い。「AVとストリップ」の節で面白かったところ。

太郎の屋根に雪はふりつむ
次郎の屋根に雪はふりつむ
もう どうにも止まらない
すばらしい。中身は「AV女優」ほど 感動しなかった。ときにシリアスな文章が鼻につく。

「新明解国語辞典第五版」
うわさの新明解がヴァージョン・アップ。なんだかカラーになって見にくく なってないか。慣れればいいのか。とりあえず手元に一冊。

「芸人」
永六輔の語録集芸人編。「ちかごろ日本の芸能のリズムは<序破急>から<起承転結>に なってしまった」「大道芸とは言うが大道芸人とは言わない。大道商人」とか、 なかなか面白い。説教臭いコメントなければもっといい。「練習通りのことが できないんだったら練習なんかするなよ」おっしゃるとおり。しかし、 意外にも一番面白かったのは最後にある三波春夫インタビューであった。 これは拾い物。ジャイアント馬場が凄い読書好きで、それも読むのが室尾犀星とか ハンパじゃないものばかりと聞いたことがあるが、三波春夫もハンパじゃない。

「日本漫画家大全江口寿史自選傑作集」
江口寿史って最近新作書いているのだろうか。スマナンダー教も懐かしいが、 (スマナンダー正大師とかひねってよく使っていたなおれ)やはりしりとり 家族がすばらしい。下品な一家はつまらない。あの歴史に残る傑作「わたせの 国のねじ式」も収録。読んだことがない人にはお薦めではあるが、 全部単行本持っているおれには、また買っちゃったよバーロ、てな感じだ。

「ボク宝」
みうらじゅんの(国宝よりも大切なボクの宝物=)ボク宝(ホー)を写真入りで紹介。 マニアックなアイテムの数々。知る人ぞ知る入魂のエロ・スクラップから、 NOMOブレイク前のサインボール、カエル、巨泉マフラーと これまでさまざまな(マイナー)メディアで知ったみうらじゅんの コレクションがこうまで並ぶとやはり尊敬してしまう。 彼がすごいのは有名になる前の一般少年時代からマニアックだったことだ。 金にあかせた有名人のコレクションとは一線を画してる。 ツッコミ如来は我が家にもぜひほしい。

「広告キャラクター人形館」
日立キドカラーのポンパ君(という名前は初めて知った)はうちにもあったのを 覚えている。懐かしい。ペコちゃん。シスコーン坊や、アロンちゃん(って誰だよ) など高度成長期の日本企業のシンボル人形をカラー写真とともその背景と 現状までの文章を集めたもの。 ずいぶん懐かしいものから、なんだそれってやつまである。 ただそれだけであった。

「この役立たず!」
ホリイの調査は週刊漫画アクションのページ下匿名コラム時代からファンだった。 これは「週刊文春」連載してるのをまとめたもの(現在も連載中)。エスカレータ に乗れない人率調査、ヘソ出し率全国調査(東京のみの現象だったのがわかる。 でありながら全国の話題となったことへの社会学的興味もそそる話題が多い。 が決してそこに入り込まない姿勢がすばらしい)、チョコボール1000個買ったときの 金銀エンゼル調査、などおばかな調査目白押し。キャッシュカードの暗証番号調査 なんかその意味はさておき、小さな字の表読み込んでしまった。とりあえず 数えてしまおうという姿勢がわかりやすい。

「お笑い外務省機密情報」
大蔵省」ほど面白くなかった。 なんとなくあいつらたいしたことしてないんだろーなー、と思ってたせいか。 思っているより語学できないらしいなんて話も聞いていたのもあるか。

「われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う」
「哲学者かく笑えり」が面白かった ので買った。この人やっぱり面白い。イギリス人英語教師との会話、 へ理屈もこのレベルまで来ると芸術だ。ときどき鋭いのがあって、 エレベータで「若いんだから歩け」と思ってしまうおじさんの思考の あたり笑える。

「MONSTER(7)」
間が開きすぎて、ストーリー忘れてしまったではないか。 だんだん収束に向かっている。今回は面白かった。スピリッツの 「HAPPY」はどうでもいいのでこっちをもっと早く進めてほしい。

「問題外論(12)」
動燃問題面白い。いかがわしさや悪人も大物でないといしいひさいちの漫画も面白く ないのだ。


10月

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「カローラ物語」
免許取得後8年。初めて買った車はカローラIIだ。とりあえず最初なので「よく走る、壊れない、安い」を主眼に選んだ中古車だ。クルマ好きの人は、マニアックなものや高性能なものについ目が行きがちだが、やはりつまらないかもしれないが、カローラやシティやマーチってのは傑作だと思う。うちの母親が何も考えず乗りこなしているのだから。現在ではワイルドカードになっているカローラだが、今では当たり前になっているさまざまな仕様(フロアシフト、ディスクプレーキ、丸型メータ、左ドアロックキーなど)を初代カローラが初めて実装したという、そんな先進マシンだったのだという話が面白かった。ただエンジンの細かい仕様など文系の私には難しいページが多かった。

「お父さんは時代小説が大好き」
ついに見つかった。「本の雑誌」私に好評連載中。本にまつわる話だが、 その周辺の面白さにとても共感が沸き、楽しい。たとえば「アルジャーノンに 花束を」を読まないまま過ぎてしまった話など。ちなみに「咳をしてもひとり」の 尾崎放哉は吉村昭「海も暮れきる」に詳しい、と伝えたくなりました。 バイト先で「本の雑誌」を読んでいたとき大爆笑したのを今でも覚えているのだが、 やはり「いなばの白ウサギ」のワニかサメか、の回が一番面白かった。

「不肖・宮嶋史上最低の作戦」
再読。これ引越しのときに わしきたくんに あげたんだけど、面白い文章に飢えてまた買う。やっぱ面白い。

「2週間でジャンキーはできあがる!」
昨年のMTV AWARDで、スマッシングパンプキンズ受賞後にニール・ヤングが 出てきた。バックには、ジミヘン、カート・コバーン、ジム・モリソン、 ジャニス・ジョプリン。この四、五年で再燃してきたドラッグ汚染に対して、 生き残ったニール・ヤングが歌ったのだ。この本はブライアン・ジョーンズから 始まったロック界のドラッグで死んだ人生き残った人のインタビューなどを まとめたもの。ドラッグ問題は深刻だが、しかしわれわれ(いや、わたし)は 紳士的でビジネスライクな優等生ミュージシャンを求めているわけでは 決してないのだ。そのサウンドだけでなく、彼らの落ちていく どうしようもない姿に、自らの破滅衝動をマッピングしてどうにかして 平衡を保っているようなときがあるのだ。大観衆を前にして恍惚の表情を 浮かべるフレディ君はたしかにかっこいいが、 またあるときは、unpluggedで息を吸った瞬間うつろな表情をした カート・コバーンに死相に不安と不思議な安らぎを覚えたりするのだ。
ドラッグから生き残ったミュージシャンの話は、(最近身近になったとはいえ) 日本はドラッグが気軽に手に入らない国でよかったと思ってしまう。 ぜったい俺ははまったと思うので。フジテレビ「NONFIX」でやっていた アムステルダムのジャンキーは恐かったし。

「悲しきネクタイ」
今は亡き「科学朝日」で連載されていたものなどをまとめたもの。日本のサラリーマン話をマニアックな科学生態ネタとからめたもの。ビジネス本の引用もあるが、これが 結構憤懣もの。どちらかというとつまらない冗談がおかしい。ただタイトルの冗談の解説は必要なし。冗談がわからん人がいるのか。

「若い読者のための短編小説案内」
「本」に連載されていた村上春樹の小説解読。自己と自我を示した図はわかりやすいが説得力はいまいちか。題材とされている小説が読書案内はあるものの、絶版ものや全集でしか読めないものばかりだ(ちなみに僕が読んだことがあるのは、講談社文藝文庫で読んだ安岡章太郎の「ガラスの靴」だけ)。以前岩波新書から出ていた筒井康隆の短編小説作法の本のときは、岩波文庫と連動して、そのテキストも一緒に平積みされていた。この本も短編をまとめてもう一冊出せば売れるし、買うのに、と思う。

「筒井康隆かく語りき」
筒井康隆の対談集。最初のコリーヌ・ブレとの対談なんか10年以上前のもので、 なんで今更と思ったが、すでにこのときから用語の自主規制の問題について 深刻に語っているのがわかる。目新しいのは中村正三郎や大泉実成との対談。 前者はコンピュータとネットワークとの関わりについて、後者は「きちがい」に ついて。

「天下御免の向こう見ず」
爆笑問題の「TV Bros」の連載をまとめたもの。「日本原論」みたいに「うわすげー」 という感動がなかった。つまらん。

「飲み屋のロック」
みうらじゅんがミュージシャンたちと酔っ払いながら話すロック談義。面白い。 いとうせいこうとはロックとめがねについて。「ロックに目覚めたとき、 眼鏡がジャマになり、救いを求めるようにエルトン・ジョンやジョン・レノンに すがった。果たしてロックに眼鏡は向かないのか!?」わははははは。 今、「ダヴィンチ」という雑誌に原田宗典がやっている連載が面白い。 「おまえは世界の王様か」という題で、原田宗典が学生時代に読んだ読書カード を紹介しているのだ。原田宗典はすごいまじめな純文学青年だったのがわかるが、 「三島は〜」なんて偉そうに書いているのが本当におかしい。これと同じで、 うっかり「いやニール・ヤングが凄いのはね」などと、別に音楽業界の人間でも ないし、ロッケンローラーでもないので、語ってしまうその様子について リアルに収録した対談集。ロック談義って無意味で不毛なんだが面白いんだよな。 ジョニーウインターの刺青の崩れ具合なんていうのが通じてしまうあの喜びって いうのは身内の用語だけで盛り上がるアニメーションオタク文化と通じるところが あるのかもしれない。 今の30代はロック的に不幸な世代だそうだ。まったくもって。だから僕の 世代のロッケンな人は見てきたように6,70年代のロックについて話していて 恥ずかしい(おれを含む)。先日「HEY!HEY!HEY!」という番組でここ三年の ベスト100をやっていたのだが、ふだん絶対聞かないけど小室関係や、GRAYも 含めて、つまらない曲が一曲もなくて今の10代の 人たちがうらやましくなってしまった。これがMTVのTOP 20になると半分ラップで 意味がわからなくてつまらないのだ。
しかし誤植が多すぎ。子供バンドじゃなくて子供ばんど。

「使いみちのない風景」
稲越功一の写真に村上春樹の文を挟んだもの。とりあえず副題に「愛する人に」とか つけるのはやめていただきたい(買うのも恥ずかしい)。
「僕らの中に残っている幾つかの風景、いくつかの鮮烈な風景、でもそれらの 風景の使い道を僕らは知らない」村上春樹のレトリックってばかばかしくて (森の木が全部倒れるくらい)好きなんだが、実はもっと 惹かれてしまうのはこういうさらっとした文章の方なのであった (だまされてる、オレ?)。写真の方はわからん。

「ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を」
その昔「本の雑誌」で紹介された変わった名古屋の本屋さんヴィレッジ・ ヴァンガードをめぐるエッセイ。ヴィレッジ・ヴァンガードのポリシーは 「新刊やベストセラーに頼らず売りたいものを判ってくれる人だけに 売る」という本屋さん。なにしろケルアックの「路上」がたくさん 売れるそうだ。その対極にある谷島屋三方原店でこの本を見つけたのが 感慨深い。経営の話、フランチャイズの話(10店舗以上あるそうだ)、 銀行やペンキ屋との戦いの話などとても面白い。 浜松市にも似たような本屋があるが(有玉北町 Milestone)、つめが今一つ。

「マン島物語 The Isle Of Man Story」
「森雅裕・幻コレクション」の3つめ。マン島レースに来たプライベートライダーと CFとTV番組撮影に来たアイドルのマネージャーの話。脇役のマン島の元パートナーの 家族。老ライダーたちも面白い。森雅裕作品の中でも三本の指に入る傑作。 森雅裕得意の不毛な会話もすばらしい。あえて文句をつけようとすると、 主人公二人がレースクライマックスで素直になってしまうのが 唐突なことぐらいだ。「森雅裕・幻コレクション」はとりあえず完結ということだが、 どんどん続編を出してほしい。「さよならは2Bの鉛筆」がまた読みたいのだ。

「オタクになれないアニメ好きの本」
アニメーションに関わりのなかった出版社が出した「流行批評」の別冊の アニメの本。おれアニメ好きじゃないからどうでもいいのだが、 ライターのレベルが低すぎる。そっち系のみなさんの雑誌とあんまり 変わらないんじゃないかな。あとこれは編集者が下手だと思うのだが、 たかが数ページのコラムの前置きに同じような話が重複していて、 もったいない。とくに目新し話もなく、出したということ以外に 価値は無い。

「破滅・梅川昭美の三十年」
かなり凶悪な銀行強盗をした人で当時小学生だった自分にも 突入のTV映像ははっきりと残っている。まさかこの中で こんな凶行が行われていたとは当時思わなかったけども。 この事件の本は以前 「三菱銀行人質強殺事件」で 読んだのだが、今回はこの梅川という犯人が十五歳のとき殺人を犯して、 一年ほどで世の中に出てきた人だというのを頭に入れて読んだのだ。 が、神戸の少年とはかなり事情が違って参考にはならなかった。 でもまあちょっと読むに耐えない場面もあるすごい事件であったのは よくわかった。このあとやな夢見てしまったぜ。

「クレーム爺さん、血気ざかり」
「ダ・カーポ」で連載している「クレーム爺さん」をまとめたもの。 この連載は楽しみにしている。なんだかよくわからん爺さんが いちゃもんつけまくってる姿は頼もしい。この人のイメージは 表紙にも書かれている「トウリャッ」のイメージで、こっちが 対象になったらちょっと恐い剃髪着流しだ。 NHK、NTT、朝日新聞、ばななのおやじ、TBSなどにクレームを つけた戦いのお話だが、かっこいい。
一つ気になったのは、この人は年金暮らしの市井の人と言ってる けど、大学時代の友人が議員秘書だの宮内庁だの経済人にいて、 その人脈を利用している姿はやっぱりちょっと違うとおもえてしまう。 市井の人に宮内庁の役人の知り合いはいないって。
それはともかく面白いのであった。

「バンドーに訊け!」
本の雑誌でずっと好きだった坂東齢人の新刊めったくたガイドを まとめたもの。読み返してみても面白い。世界一かわいいマージは 浜松出身だそうだ。とりあえず、団塊の世代が 嫌い、森雅裕が好きという共通点があるのだ。おれの場合 ハードボイルドやミステリはさっぱりわからんし、北村薫の小説の主人公は 大嫌いではあるが。辻仁成のシリアスな小説に「そんなに都会の人間って 孤独なの?」とギャップを感じている文章。まさにそのとおり。 おれべつに都会が嫌で地方都市にいるわけじゃないもんね。 思えば10年住んだ東京は、機能的で住みやすくて楽しいところであった。 高校生のころ初めて聞いたエコーズのデビューアルバムはかっこよかったが、 実は辻仁成は単なる学級委員でロッケンローラーじゃないというところを鋭く 見抜いている。 まじめなこいつに真心ブラザーズの歌を聞かせて上げたい、だって。わははははと 笑う。
ちなみに引越しの際の大粛清を生き抜いた本に「へのじぐち映画読本」という のがある。これは現在本の雑誌にも書いている黒田清一という人がやっていた 北海道の自主上映映画ホールが出していた「BANZAIマガジン」の別冊で、 そのJABBホールで制作した「へのじぐち」という映画の副読本である。 映画を見たときに監督の横で買い求めたんだが(中野武蔵野ホールだし)、 ここに本の雑誌連載前の、坂東齢人の「バンドーの聞け」が載っていて 映画とは関係なく隆慶一郎を薦めている文章がある。これはさらに 初々しい文章でなかなかよろしい。この前偶然出てきて読み返したら 面白かったので少し自慢してみた。以上。

「哲学者かく笑えり」
この人の「われ笑うゆえに我あり」とか書店で見かけていても、「笑い」などと 書いてある本で笑った試しはないので買わなかったが、 「本の雑誌」のめったくたガイドで古屋美登里が誉めていたので買う。 著者はお茶の水大で哲学を教える大学教授。なお著者は違うが「ソフィーの世界」は 世界的ベストセラーになった。 最初つかめなかったがだんだんツボがわかってきてわらわかせてもらった。 パターンは大体一緒だが、ダウンタウンの松ちゃんのボケに近い気がする 私好みのやつ(言葉自体はふつうだが文脈が異なるので笑える)だ。例をあげると こういう感じ。女子大で哲学を教えることについての文章で「学生の理解力の なさに苦労することもある。ちょっと難しい話になると、いくら説明しても 学生が理解を示さないことがあるのだ。とくにわたし自身よくわからない事柄に ついての理解力が弱いようだ」とか。これ一つだと笑えるほどではないが、 こんなのが文章のほとんどなのだ。1/3すぎたあたりから夢中で読んでしまった。 意外な掘り出し物。古屋美登里も書いていたが、 付録についた大学時代の先輩との往復書簡もすばらしい。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(104)」
プリクラにスタンプクラブ、たまごっちで女子高生トレンド漫画になってるぞ。


9月

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「枡野浩一短歌集(1) ドレミふぁんくしょんドロップ」
「枡野浩一短歌集(2) てのりくじら」
短歌界の将来を担い世界を変えると言われた大物と本人だけが認めていた 歌人内山空月(おれのことだ)をプログラマーへと転身させた罪な歌人。 角川短歌賞最多得点落選歌人。特殊歌人枡野浩一の短歌集。

きょうはラの音でくしゃみをしたいから「ドレミふぁんくしょんドロップ」は青
育ちすぎた「てのりくじら」は百円でマクドナルドが買うとの噂
もう一年以上待ち続けたのだ。 話題沸騰中、かと思ったら、Yahooで検索できるサーチエンジンすべて検索しても おれの「探しているけど見つからない本」の ページしかひっかからないでやんの。どうなっておるのだ(1997/10/01現在)。 書店も4つ探してやっと見つける。俺が本屋の店員だったら百冊仕入れるんだが。 もっとも「サラダ記念日」のときにそうであったように、初期ロット(って 言わないか)が少なくて地方には割り当てがないのかもしれないが。ここで 予言してしまうが、 クリスマスころにはベストセラーになってるであろう(1997/10/05記す)
大学院の先輩にまじろうくん という人がいて、彼が高校時代の文芸部のOBたちと「風力船」という創作同人誌を 出していた。同人誌という言葉は聞いたことがあっても身近にそういう人がいるとは 思わなかったので購読させていただいた。正直なところレベルが低くて(ほかの ものをまったく知らないので基準は商業誌のプロ作家にあるのでアンフェアか?)、 いっちょ小説とかいうもをおれが書いてやろうと 書いたらもっとひどいのしか書けず(しかも文章がうまいなどと評価をされたので よけいひどい気持ちになって)、まー読むだけにしようと思っていた。
でそのまじろうくんの高校時代の友人に金澤憲仁さんという人がいる。 この人は昨年「短歌現代」新人賞を受賞したえらい人なんだけど、 たとえばこの人の短歌を一つあげさせてもらうと、

ゆうぐれの風はアダージョおだやかにコスモス揺れてこころやわらぐ
とまあこうくるのだ。「アダージョときたかー」と大爆笑させていただいたんだが、 その反動で、よしいっちょ俺が短歌でブイブイ言わせてあげようと、 「短歌って季語ってほしいんだっけー?」などとまじろうくんに教えてもらいながら 詠みはじめたのだった。最初慣れなかったものの、そのうち見るものすべてが 五七五七七になってしまうくらい句があふれ出てきたのである。信じてもらえない だろうが、井の頭線の終電でメモを出して思い付いた短歌を書き留めたりという生活を しばらく続けた(すぐ飽きたけどさ)。 ちょっと出来がいいと思ったのをあげてみよう。

物干し場をベランダと呼ぶように語れタレント候補は教育問題
あんたには何も言いたいことはない切り刻め俺の堪忍袋
言っていることとやっていることが違うのはそこに山があるから
なんだか怒っていたらしい(笑)。もちろん恥を忍んで書くが

その考え面白いねと言う君にステキなプレゼントさしあげます
ちょっとそれ違うんじゃないとも言う君にあたるダブルチャンスもあります
などというラヴラヴな歌も詠んでいたのである(ああ恥ずかしい)。 正直俺は凄いかもなどと思っていた。なんてときに 初めて「中森文化新聞」で枡野浩一の短歌を知ってしまったのである。 そこで本当に感動してしまった。句のレベルがぜんぜん上でうまいのである。 まさに才能に勝る努力無し。 たとえばコンビニを歌ったものを挙げてみると、ワタシの場合

人間を殺せるナイフを売っているセブンイレブン年中無休
なのだが、枡野浩一の場合は

ローソンに足りないものをだれひとり思い出せない閉店時間
である。断然良い。病気で寝込んだ歌は 枡野浩一の場合は

三日ほど風邪で寝込んで久々に夢をたくさん見たので正気
いいねえ。ところがワタシの場合

風呂は入れぬ病の床では人肌は恋しくはないが股がかいーの
下品です。ということで、あーこりゃかなわんと素人が調子に乗ってはいかん、 と思ってやめてしまったのである。だから彼の短歌集を心待ちにしていた。 ということで特別にお薦める。俵万智も口語短歌だけど、あのひと基本的に 優等生だからつまらないのだ。少なくとも人生の選択肢に国語の先生を 挙げてしまった人なのだ。枡野浩一の方がいいのは フィクションじゃない点だ。うまく書けないのだがとにかくまあ、良さを伝えるのには 気に入った歌をあげるのが一番だ。
結果より過程が大事「カルピス」と「冷めてしまったホットカルピス」
「レモネードレイン」と呼べば酸性雨すらも静かに叙情していく
振り上げた握りこぶしはグーのまま振り上げておけ相手はパーだ
ああすばらしい。

1999/02/04:
これだけ注目せよと書きつつ、 名前を間違えておりましたので(恥ずかしい) 直しました。ご本人から(!)指摘されるまで気づかなかった。 ということでもう一つ枡野氏の短歌を引用。

桝野ではなく升野ではなくまして増野なんかじゃない枡野です  枡野浩一



「私がマイクロソフトで学んだこと」
マイクロソフトでオフィス部隊やCD-ROM部門でマネージャーをしていた 著者のプロジェクトを成功させるための事例集みたいなやつ。 ビジネス本に分類されるたぐいのものだ(プログラミングの本だと 思って買ってしまったのだ(うそ)。世の中ぶいぶい言わせているMS だけあって説得力はある。なかなかマイクロソフト社員の話は 聞くことできないし面白いかも。ただ自分は食欲物欲性欲は人並みだと 思うが出世欲がどうやらないようなので、一部辟易する部分もある (たぶんそういう人はたとえマイクロソフトに入ってやっていけない)。

「ダウンタウンの理由」
ダウンタウンの大阪時代の苦労話は知っていたが、東京へ出てきた あとの苦労話は知らなかった。ダウンタウンを初めて面白いと 思ったのは若手漫才師を集めた番組だったと思う。「夢であえたら」よりも 前の話だ。ちびっこギャングと彼らが飛びぬけて面白かった。なお、ちびっこ ギャングは消えた(タモリ倶楽部でときどき見かける)。 本当に天才だと思ったのは「ガキの使いやあらへんで」のトーク。 今でも波はあるが面白い。この本では二人の出会いから24時間テレビまでの彼らが 詳しくわかる。で? と聞かれるとそれまでだが、実績ができてから偉そうなことを いうのは簡単だが、実績がないうちから偉そうなことをいうのはパワーが いるよなーなどと思った。

「テリー伊藤の怖いもの見たさ探検隊」
総会屋、交通刑務所、相撲協会などを探検した文章を書いているんだけど、 テリー伊藤にしてはさっぱり面白くなかった。だって当たり前のまともな ことしか書いてないからだ。正論は久米宏や筑紫哲也にまかせておけば よろしい(でも最近ニュースステーションに出てるらしい、どうしたんだ)。

「絵本を抱えて部屋のすみへ」
江国香織がいろんな有名絵本の魅力について書いたエッセイ集。 登場する絵本の中で 読んだことがあるのは まじろうくんに 教えてもらった「アンジュール」だけだった。 いくつかの絵本は読みたくなった。著者の文章が取り上げる絵本への 愛に溢れているのが読んでいて心地よい。

「むいむい」
タイトルの「むいむい」は土佐弁で「むし」を意味すると腰巻きにある。 昆虫博士西田氏とりえぞう先生の昆虫観察漫画。いいかげんな内容なんだけど、 りえぞう先生の話術というか物語りがやはり面白い。

「フラグメンツII」
フラグメンツそのものはあんまり面白くなかったいつもの山本直樹のえっちな 漫画だった(なんだかどんどん線が細くなってく)が、「地球最後の日」 はスピリッツで読んでいるときは流していたがコレ面白いや。 1997年7月、学生の机の上に神様と名乗る10cmぐらいの 紳士があらわれ「最後の大王」をなんとかしろと言われる。少年は まー明日で世界が終わりならといろいろ陵辱を尽くすのだが、という漫画。

「YAPOOS」
4コマ漫画。おばか。ワシントン条約爺さんやらプルンプルンしてるマンやらいろいろ 出てくるが「即身仏になるために土に埋まってる彼」と交際するOLが一番気に入った。 唐沢なをきの漫画は面白いけど笑い声にならないのが多いが、珍しくいくつか笑った。

「椿姫を見ませんか」
再々々々読ぐらいか。 その昔この本を読んだころから森雅裕にはまりまじめた。 彼の作品が絶版になりつつあると聞いたときは、すでに著作の多くを 手放したあとで、これもレンタルビデオと中古ゲームソフト売り場が 一緒にある古本屋(といってもいわゆる古本屋でなく、 ここ数年目立つようになったネオUSED BOOK屋、ってなんだそれは)で 偶然見つける。
オペラを題材にしたシリーズの第一作目。ヒロインの声楽科学生鮎村尋深 と日本画科学生守泉君が芸大の「椿姫」公演を 舞台に起こった殺人事件に関わっていく話。 この二人、これ以降より不毛な関係になっていくのだが、 このころはまだ微笑ましい。 オペラやら絵画に関する知識を前提にして物語と謎は進んでいくが、 どちらも明るくない人にも楽しく読める。

「ターン」
「スキップ」に続く「時と人」三部作の うちの第二作。やっと見つけた。前回は高校生からとつぜん中年女性に 時間がスキップしてしまった女の子の話だったが、今回は同じ一日を 繰り返しつづける女性の話。
正直なところ前半退屈で「でもスキップくらい面白いはずなんだよなー」とでも 思わなければとても読み進められなかった。しかし、後半になったら 急に面白くなり、一気に読んでしまった。 詳しいストーリーを書くとつまらなくなるので、とにかく前半は我慢して みよう、としか書けない。
相変わらず「基本的にいいやつ」や「基本的に教養人」ばかりなのがナニだが、 まあたまにはそういうのもいいか。そういう意味ではちょっとその原則から 外れた彼がこの物語の救いであった(よくわからないだろうが、説明すると つまらないので)。

「ウクレレ・ラヴ」
ハーブ佐竹(SATAKE-SAN)のインタビューから、 ウクレレマンまで。装丁が両開きでソングブック編は 「ブルーハワイ(永瀬CMバージョン)」から「いとしのエリー」まで載っている ウクレレへの愛にあふれた本。
僕がウクレレを初めて触ったのは兄が中国で買ってきたチューニングも まともにできないのを手にしたときだ。これをもらって大学の研究室に 置いておいた。卒業するころには7名ほどが弾けるようになっていた。 他の楽器ではこうはいかない。いまだに3つしかコードが 弾けないが、時折爪弾く。
その安物ウクレレは大学院を出るときに「仏恥義理」とサインを書いて研究室に 置いてきた。もう捨てられてしまっただろうか。

「と学会白書 VOL.1」
と学会がオカルト系の人の主張をバッサバッサと切り倒すのは読んでいて 楽しい。が、と学会の主旨は決して反オカルトにあるのではなく、 トンデモ本を楽しむところにあり、その活動の中心はトンデモ本の みなさんをやり玉にあげることでなく、例会でそれらを俎上に乗せ 発表を楽しむということろにあるそうだ。ということで、 例会の様子や、結成に至るエピソード等の座談会が書かれた本。
以前書いたように、植木不等式氏、皆神龍太郎氏はお会い しお話ししたことがある(はず、両氏の本業の関連で会った。 知り合いというほどではなく、こっちはよく覚えているが 向うは忘れていると思う)。どちらも 話が面白く、鋭いツッコミがあって、 しかも科学的に高度な冗談もあって(半分ついていけなかった) 楽しかった覚えがあるので、こういう人ばかり集まった様子の おばかな楽しさも予想できるが、そういう楽しさを なかなか紙上に再現するのは難しいんだろうなと思った。 ただの内輪うけみたいに見えちゃったり。
発表された物件の中では中松義郎ネタが笑えた。 よりいっそうの活躍を期待します。

「トットちゃんとトットちゃんたち」
いいらしいと人に聞き、本屋で手に取ったら面白そうなので買ってみる。 黒柳徹子がユニセフ親善大使として見聞した 世界のつらい状況にいる子どもたちのレポート。 その手のいつまでたってもなくならない過酷な現状は 把握しているつもりでも、やはり読むと見てられないしつらい。 つらかったが、正直なところ本の半ばですっかり慣れてしまった 自分がいるのであった。こういう本は難しい。が、書いてる方も説教臭く ならないように、必要以上に感傷的にならないように、なるべく 事実の描写に止めようと気を使っているのがよくわかる。

「獄の息子は発狂寸前」
右翼の内ゲバ殺人事件(その事件の顛末については鈴木邦男の 「夕刻のコペルニクス」に詳しい) を犯した著者の満期出所までの生活と母との往復書簡。母親の凄さを 描いた本。 検閲を逃れるためのあぶり出し(レーニンの本を読んで思いついたそうだ)、 本の背に隠した文、綴じた部分に隠した文、暗号などすごい面白い。 この人は出所後の写真などで見ると、色男なのだが右翼的な凄みがあるんだが、 母との関係の中ではただのわがまま息子になる。もちろん監獄という特殊状況が そうさせるのだと思うが、ほんとに母親が凄い。最初は自殺しようと 考えたりするものの、しだいに息子が殺人を犯したため世間からの 風当たりも強い中(しかも思想犯なので公安の執拗な嫌がらせがある)、 獄の息子をサポートする。息子のためにグラビアやヌード写真を綴じて送る。 息子の書いた小さい字の小説を清書する。 (この獄中で書いた「天皇ごっこ」は新日本文学賞を 取り、そこで僕もこの人の名を知った) そして、 獄の息子に「死ぬなら死ね」とも激を飛ばす。 刑務所内での著者の生活も過酷ではあるのだが、それが霞んでしまうほど 外にいる母親が凄い。面白かった。
追記: 「ゆきゆきて神軍」の奥崎謙三が今夏出所した(殺人未遂で懲役12年)。 相変わらずイッてるらしいが、「SPA!」の鈴木邦男の「夕刻のコペルニクス」 に面白い話が載っていた。この本を読んで感動した奥崎氏は、この母と 結婚すると言い出したらしい。それを聞いた見沢氏は「殺人犯なんて嫌だよ」と 言い(それに対し鈴木氏の「おまえも殺人犯だろ」というお約束のツッコミも 入る)、もちろん見沢氏のご母堂も逃げたらしい。どこかで読んだのだが、 見沢氏、奥崎氏、そして赤軍の塩見議長(全員現在は出所している)の 三人は刑務所で反抗的で有名だったらしい。そのうち二人も身内に持ちたく ないよなーと失礼ながら笑えました(1997/09/18)

「小説・シャイン」
表紙をよく見ると日本人がノベライズしてる。あくどい。映画の シーンをただ書いただけで、説明がどうしても過剰になってしまって、 映画自体の良さも半減させられている。映像表現をそのまま文にしても 決してそれ自身を伝えられないということがよくわかる。ただ あとがきに著者が「筆の持つ限界」と書いてあるが、それはあんたの筆の 限界だ、と言いたい。
これを読むんだったらヘルフゴットの奥さんギリアンが書いた 「すべては愛に」を読んだ方が100倍良い。

「画狂人ラプソディ」
森雅裕デビュー作。探しはじめて10年。ついに読むことができた。 横溝正史賞佳作。デビュー作とは思えない凝りかたがさすが。 芸大で起こった殺人事件に挑む芸大生の話。 葛飾北斎や偽ヴァイオリンと収賄事件、そして徳川埋蔵金と、 どんどん話が大きくなっていくが、 さすがにデビュー作ゆえに、専門知識の説明が 物語に突如現れたり、いろいろ詰め込みすぎていて、 以後の作品と比べ少し読みにくいところもある。
鮎村尋深オペラ三部作など基本的な登場人物の設定はすでに デビュー作から同じであったのことなどわかって、 面白かった。ただ、 森雅裕作品を最初に読むには、「椿姫〜」あたりが いいと思う。
これで森雅裕作品で読んでいないのは私家版(いつまでも折りにふれて← 著者に頼めばまだ買えるのだろうか)を除けば同じ角川から 出ていた「サーキットメモリー」だけだ。

「写真のワナ」
戦前から現在までの報道写真のその本当と嘘の実例をあげながら、 映像の雄弁さと同時に存在する誤解、罠について書かれた本。 皇室取材や裁判撮影などの現状もわかる。その事例はとても面白いが、 この人は説明が下手で何が言いたいのかさっぱりわからない節も多い。 こういうのを読むと「俺はだまされないぞ」というより 「俺もいつだまされてもおかしくないし、今でも騙されているかもしれない」 と思う。たとえば、先日あったフランスの事故でも、 ダイアナ妃が事故死した、カメラマンが追っていた、という 二つの事実だけで、過剰な取材が原因だ、 と当然のように思っていた。マスコミの論調もそうだった。 酒酔い運転という記事を読んで、ああ松本の会社員のときもそうだったが、 思い込みは恐ろしい。おらー新聞記者や久米宏でなくてよかった。

「モーツァルトは子守唄を歌わない」
森雅裕の本はほとんど絶版となってしまっている。江戸川乱歩賞受賞作の これも例外ではない。昨年引越しの際に「歩くと星がこわれる」以外全部 売ってしまったのをとても悔やんでいて、古本屋で見つけたらすぐ買うように している(先日も「椿姫を見ませんか」を発見)。 と思っていたら先月から「森雅裕・幻コレクション」という泣けるシリーズ名で 刊行が始まった。嬉しさで鼻水が止まらない。以降「画狂人ラプソディ」、 「マン島物語」と続くらしい。「画狂人ラプソディ」は僕が森雅裕を知ったころ にはすでに角川ノベルスで絶版になっていたので、まだ読んでいないのだ。
この本はベートーベンと弟子のチェルニーが、モーツァルトの死を巡って、 ウィーンを舞台にドタバタ推理していく(へ)楽聖小説。 クラシック音楽をまったく知らない 自分でも楽しく読める(森雅裕の小説は、クラシック、オペラ、刀剣、新選組、 レースなど、僕がまったく知らない舞台が多いのだが、難なく楽しめるのが特徴)。 ベートーベンとチェルニーの掛け合い漫才は「ヴェートーヴェンな憂鬱症」で より加速されるので、こっちも出してほしい。


8月

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「沙流羅(5)」
なんだかストーリーが繋がらないと思ったら、 4巻はまだ読んでなかったのだ。 ということで、近未来の荒れた地球で離れ離れになった子供たちを探す強いお母さん サーラは、長男とついに再会を果たしました。 上手い絵と巧みな物語で安定している漫画でありながらも、 なんつーかこー一生懸命読めない。どうしてだろう。 それは途中の巻を飛ばしたせいかと思ったら 3巻の感想でも同じ事書いてある。

今月はビデオ月間だったのでほとんど本は読みませんでした。

「少年被疑者」
14歳の少年が殺人を犯した。少年法との関わりなどを女性検事を主人公に、 現役女性検事が描いた小説。さあ出版しよう、 としたところに似た事件が起こったらしい。文章は下手だし、 物語もたいしたことないし、少年たちの言葉が20年前の少年小説なみ、 ミステリのなぞもつまらない。少年法の話も最近の新聞の方が詳しい。
この小説に書かれている状況で もっとも真実味が無いのは、マスコミ攻勢がまったく描かれていないことだ。 少年が起こした猟奇的事件は想像力の範疇にあるが、 事件前後のマスコミ狂乱は想像以上に暴力的であり根が深い。 48憶の妄想。おれに関する噂。コミック雑誌なんかいらない。 原田宗典は名作「スメル男」を文庫化したとき、大幅加筆した部分があった。 それは主人公にマスコミの取材が殺到する場面だった。

「奇跡の人」
脳死寸前から奇跡的に回復した青年の話。とだけ書くとヒューマンドラマ系 かと思わせるがそうではない。病院から退院後の話である。しかも 分類はミステリだと思う。詳しく内容を書くと読んだときつまらない。 ということで書評を読んでもよくわからなかった本。確かに。 朝までかかって無理に読んでしまったが、面白かったと言われると、 意外であったと答えると思う。つまらなかった。

「鉄道員」
直木賞受賞作の叙情短編集。最初の表題作は読めていたにも関わらず泣かせる ほどたしかにうまい。心を休めたい人向け。 貸してしまったのでタイトルを忘れたが最後の 薬剤師さんの話もよかった。舞台はどうやら方言や内容から察するに 遠州地方で、そういえば迎え火とかパチパチ鳴るほどいいとかやった。 しかしここに出てくるほど閉鎖的ではない。この話、設定が藤枝静男の パクリかと思ったが、こっちの方がわかりやすい。

「ののちゃん(1)」
朝日新聞の漫画の主役をついにお兄ちゃんから奪ったののちゃん。 相変わらず面白い。藤原先生もおばあちゃんも大活躍。

江國滋
江國滋死去。新潮社のPR誌「波」の「日本語八つ当たり」を十年くらい前に 読んでいてとても面白かった。名前が同じで親近感を持っていたが残念だ、 というほどよく考えると読んでいない。俳句の本を読んだんだったかな。 大丈夫、われわれには娘の江國香織がいるではないか。やすらかに眠れ。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(103)」
ケーキ作りのために軍用輸送機を使うところでひじょうに笑いました。

「交通事故鑑定人環倫一郎(1)(2)」
「ブラックジャック」(医者)「マスター・キートン」 (考古学者・保険調査員)「ドクターK」(医者)「ミスターハーレー」(医者) 「ギャラリー・フェイク」(美術商)、最近では「スピリッツ」で始まった 世界をまたにかける獣医の話など、ある特殊な職業のプロを、 アウトローゆえに舞台の制限がなく、さまざまなエピソードと 重ねて描いていく漫画がある。これは交通事故鑑定人という職業を テーマにした同類の漫画。でもここに上げたものと比べレベルが 格段に落ちるのは、(1)ドラマがつまらない(2)専門知識と物語の 絡め方が下手(分離してしまっている)(3)絵が一本調子、などの理由だろうか。 つまらない。

「シャウト!金髪先生」
叫ぶ詩人の会(笑)のドリアン助川によるロックミュージシャンのお話と 英語詩を理解するための英語教室。TV番組の採録。 ドリアン助川とはどういう本を出しているのかという話があって、 僕自身、NHKでやっていた下手な詩と「ダ・カーポ」のつまらない連載 のイメージがあって興味がなかったので、 試しにそのあと本屋で立ち読みしてみた。 一方は子供電話相談室みたいだったので、こっちを買ってみる。 英語はともかくミュージシャンのお話は、 自分には今さらであったが、知らない人には面白いと思う。 でもやはりロック親父は苦手だ(自分のことはさておき)。 たかがロックではありませんか。


7月

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「エヴァンゲリオン研究序説」
やたらある解説本の中で目に付いたので買ってみた。 名前による性格診断はやめてほしい。登場人物を精神分析上の性格分類をし、 内容に付いて宗教方面や精神分析学方面からあれやこれや書いた本。 詳しく分析してありそうに見えて、実はどこかから引き写したような 周辺知識がならべてあるだけでつまらない。 これだけ精神分析系の用語のひけらかしができるのだったら、 シンジ君の初期の引きこもり と中盤の心の開き方の性格描写の破綻ぐらい分析してほしい。 後半のいくつかの英語タイトルの解説程度もできないのかな。
ほかにもいっぱい解説本みたいの出ているんだが、こんなのばっかり なんだろうか。

「ぼくんち(2)」
文春漫画賞受賞受賞作品。少年二人の世界は、 シャブ中、ヤクザ、暴力、無職、トルエン、ムショ帰り、 水商売、賭博、貧乏、母の家出、 とその生活はハードで貧しく暴力的だ。 そんな中で少年が悲しんだり喜んだりしている姿が、 あのサイバラの絵で描かれる。 これがあの世の中をなめてる柴門ふみの「お仕事です」と 同じ雑誌に載っているのだ。お茶大と高校中退の人生経験と、 それゆえの人間への洞察の深さの差が見事に現れている。 涙なしには読めない傑作。

「じみへん(5)」
初期ほどではないが心に残るすばらしいのがいくつか。 「うむ」とうなってしまうのがある。この人は洞察力というより 地味な客観性がすばらしい。

「気まずい二人」
これだけ盛り上がらない対談集もすごい。もちろん笑えない。 偉いのはふつうはいかにも盛り上がったかのように編集してしまうのをそのまま 出しているのと、なんとなく盛り上がったように見えてしまう「(笑)」を、 脚本家の意地で入れなかったとこと。たぶんこの対談シリーズ(そしてこの本) 自体の存在が三谷幸喜の笑いの本質なのかもしれない。ところで本当に 「枝豆ともやしは同じ」なのだろうか。

「エヴァンゲリオン四コマ全集」
アニメの世界はおそらく僕はそのものが嫌いだけではなくて、それを 取り巻く世界やノリが嫌いなのだとわかった。 つまらなすぎる。これまで通り閉じた世界でやっていっていただきたい。 こっちもうっかり入り込まないようにするから。

「日本警察」
ノンフィクションを書く人にしては文章と説明が下手すぎる。 警察の階級について書かれたところ、図示も下手だし、何度読んでも 意味がわからないところがあった。交番を半日取材しただけで「密着取材」と 書いてしまうその根性が気に入らない。とりあえず面白かったのは 交通事故死者統計のいいかげんさや、地域警察の低下の話。

「ペルー日本大使公邸人質事件」
発展途上にあったり混乱から抜けるときに、ある程度独裁的だったり 強権的な指導者の力によってそれが成されることがある。あのヒトラーも初期は そうだった。どうもペルーのフジモリもそういう政治を行ってるかもしれない。 ペルー刑務所の過酷さは以前から問題視されていた。 しかし日本の新聞だと、どうもそういう状況が見えなかった。この本は 事件で賛否両論ありながらも大活躍した共同通信社がまとめたもの。 あの「共同通信進入可」の張り紙は、赤十字の食料にこっそり MRTA 宛ての書簡を入れて交渉したものだとか、日本の池田外相の情けなさだとか、 記者の多くが突入の事実を知らなかったとか、いまだからわかる話が多くて、 長引いてしまって全容がつかめなかったこの事件を把握することができる。

「マイブームの魂」
「マイブーム」という言葉をみうらじゅんが言い出して二年くらい。 本当に流行ってきたみたいで、宝島系や青林堂系でないところでも目にする ようになった。 この本はみうらじゅんがいろんな雑誌で書いてきた 「女装」「奥村チヨ」「仏像」「ブロンソン」「ディラン」についての 文章をまとめたもの。世間の流行とは無縁の偏愛。すばらしい。 表紙は女装姿の写真。 昔彼のディランのレコードコレクションを 見たことがあるが、ディランのレコードは1000枚持っている そうだ。ディランがいくらいっぱい出してるといっても1000枚はない。 圧巻だったのはブロンド・オン・ブロンドの世界中の各国版のコレクション。 同じジャケットが20枚くらいあるのだ。日本版も帯が変わったのをすべて 持っている。あれにはまいった。 奈良の大仏の前でのディランを見るあたり、そしてディランの日本ツアーの ライブをすべておっかけ、その途中でディランについに会うあたり、感動的。
初期の「牛」や最近の「甘えた坊主」「世界のいやげもの」は入ってない ので続編のネタは十分あるはず。 ちなみに先日見たいとうせいこうとの「ロックンロール スライダーズ」(スライド上映しながら話をするだけ)によると、 次に「くる」のは芭蕉だそうだ。

番外:「岸和田少年愚連隊」
今朝(1997/07/18)の朝日新聞によると中場利一が 覚醒剤不法所持で逮捕されたらしい。拘置所からの 「岸和田少年愚連隊・成年篇」に期待したい。 と北京放送は論評抜きで伝えた。

「僕が右翼になった理由、私が左翼になったワケ」
一水会の鈴木邦男と晩聲社の和多田氏の対談。 お互い、そうですね、そうですねと言いながら昔話をしているだけ。 特に鈴木邦男がものわかりが良すぎる。と、一般人の僕が思うくらいなので、 右翼内部からも批判されている(と彼自身が書いている)のも当然か。 とりあえず鈴木邦男には赤報隊のホントの話、和多田氏には共産党時代の ヤバイことを書いてほしい。

「新世紀エヴァンゲリオン(1)(2)(3)」
漫画はさておき(つまらなかったらしい)、 最近ついにTVシリーズ全話を見てしまった。なんとアニメーションの TVシリーズを全話見るのは「宇宙戦艦ヤマト」以来20年ぶり。世代的には 「ガンダム」の世代らしいのだが、あれをやっていたと思われる中学生のころには、 すでに私はロッケンロールに夢中であったので、その手の話題はさっぱり わからなかったし、正直言ってバカにしていた。もっと正直に言うと、 今でもバカにはしている部分があり、かつ今でもあの絵や声や雰囲気や 足のホクロが苦手だ。 偏見なのはわかっている。でもいくらピザの話をされても、 僕はチーズが食べられないのだ。
ということで最初は絶叫する軍人と絵柄と現実にマップできない明るい会話に ゲロはきそうだったが、気が小さい主人公が家出する第四話ではまる。 人格に難がある主人公の厭世観の描写がかなり真に迫っていたからだ。 その手のことでイッちゃった経験のある私は人格障害や精神障害の描写には、 平均的なみなさんに比べ少しきびしいのだ。小説でもたまにうまいのがあると 元神経症だったりする(宮本輝とか)。ちょうど後半を見た時期が、 神戸の不幸な事件のアレコレと重なり参った。
で内容はどうかというと、たしかにイッちゃってる人ばかりで妙な盛り上がりがあって 面白かった。突然自問自答を始める回があった真ん中あたりからが凄かった。 こいつが話題になったのはやはり最後に問題が解決しなかったからか。 その辺は自分はどうでもいいだ。たとえば、 村上春樹の「ねじまき鳥」の方がよっぽど ストレスがたまった。最終話が鶴見済のレポートそのまんまの 洗脳セミナーみたいだったのもかまわない。主人公が正しい方向に救済される必要は ないのだ。やはり、面白かったのは、誰も見たくない、見せたくない「内なる私」を 思いっきり前面に出しているところだ(ぼくを裏切ったなー、とか、私を見てー、 とかあの絵と声で言われるとさすがにすげーなと思いました)。 漫画はTVシリーズほど緊張感がない(声がないせいだ)からそうなのだろう。
シーンとしては雲の中から光の筋が出てきて、ハレルヤが流れて、「精神汚染」されて いく赤いやつのところが、寒気がした。すごいすごい。あとエレベータでの 長回し。長回しといえばタルコフスキーの「ノスタルジア」のクライマックスが 凄かったが、あの場合はろうそく消さないように往復していたからいいが、 こっちの長回しは同じ絵をずっと見せているだけなのだ。すごい。
フロイトからR.D.レインまでの精神科用語と精神分析系用語(この2つは 分けて考えよう)からユダヤ密教系、ディラン、矢野顕子、の引用と思えるものが 多くあったのが笑えた。 他にもいろいろあるのかも。解説本が本屋にやたら並んでいるのもそのためか。 こういうのはマニアはたまらないんだろう。 奥田民夫の「のばら」聞いて、おおディランだ、「ミスタータンブリンマン」だ、 って喜ぶのと根は一緒だろう。勝手にやっていよう。
サブカルチャーとしてのオタクのみなさんの特異性は、その自閉性だと思う。 なにしろ晴海だかどこかに年二回、 ウッドストックやワイト島みたいに人が集まっているのに、 僕は知らなかった。僕の周りでもそのことを知っている人なんていなかった。 今でもやっているんだろうか(たぶんやっているんだろう)。 ハイテク系のオタクの世界は「夢と希望の」インターネットブームによって、 一般社会との接点が生まれ、今ではすっかりその領域を侵されてしまった。 アニメ系のオタクのみなさんの世界が、 一般誌でも特集されたこの作品によって、 はたしてその一般化の端緒となるかと聞かれたら、 よけい断絶が広がるきっかけになるんじゃないのか、と答えると思う。 なぜならたいへん感動はしたものの、二回見る気にならなかったからだ。

「田宮模型の仕事」
小学生時代ほんとうにたくさんプラモデルを作った。タミヤが 一番好きだった。バリがほとんどなくて、子どもでも他社との 技術力の差がわかった。この本は、戦後の木製模型 から、今のミニ四駆ブームまでタミヤの仕事を紹介したものだ。
ひとつひとつのエピソードがとても面白い。今では当然の 軍艦の模型の縮尺をタミヤが初めて同じにした話。最初に作った 戦車のプラモデルはパンサーで、それに単二乾電池二本が入る縮尺が、 あの1/35シリーズとなった話。ソ連の戦車のホンモノを見るために、 中東戦争のさなかイスラエルに向かった話。タイヤのパターンを 初めて再現した話。ポルシェのプラモデルを作るために実車を 買ってすぐ分解した話。経理部の社員が、電動ラジコンカーを企画設計 した話など。
でも一番印象に残ったのは、催事部の社員の話。ミニ四駆大会では、 「キミたち」「ボクたち」という子ども向けイベントの呼びかけは 使わず「選手のみなさん」と言うそうだ。 あのいやらしく悪どいほどのチューンナップパーツの売り方や、 技術力やセンスももちろん現在のタミヤを作ったのだろうが、 やはりこの並みではない子ども(それは客なのだ)の理解があって こそだろう。

「消えたマンガ家(2)」
とりいかずよし「トイレット博士」(懐かしい。大好きだったマタンキ団と スナミ先生)。ふくしま政美はよく知らない。すごい筋肉漫画。で、 今回のメインはやはり腰巻きにもある「少女マンガ家は、なぜ教祖に なってしまうのか?」である(以前番外で書いたもの)。 「エースをねらえ!」の山本鈴美香は、新興宗教の「ヒメさま」。 「ガラスの仮面」の美内すずえもすっかりイッちゃってるセミナーみたいの 主催している。内容読むとまったくめまいがする。こういうオカルティズムや いいかげんな宗教になんでハマるやつがいるのだ。大泉実成は 山本鈴美香の「神山会」について本を書くそうなので、宝島30で やってたオウム騒動渦中でのオウム入信ルポみたいな面白いものが 出てくると思う。楽しみだ。この本の文章、神山会の潜入の章が 飛びぬけて面白い。吠えまくってる。

「VOW(9)」
宝島がエロ雑誌になっても「VOW」は相変わらず「VOW」である。 多くのエピゴーネンを生んだこの企画、すでにネタ自体に笑うことは なくなった、ではなぜいまだに買い続けるかというと、やっぱ笑える からであって、それはなにかとたずねたら...コメントのおばかさである。 ロックやサブカルチャー系のマニアックなコメントやそのノリが 好きなのだった。でもそろそろ自分ツッコミ (←ってなんだよ)(←こういうの)は飽きた。
ところでカバーの裏の写真は本当にあの山田五郎なんだろうか。情報モトム。

「じんべえ」
じんべえさんは血がつながっていない娘と二人暮らし。妻は再婚で、すぐに 亡くなった。じんべえさんはいい人で、娘もいい人で、お互いスイタラシク 思っているのだが、なんやかんやあって、いい方面を予感させるエンディング という、要は中学生のころ読んだ覚えがある「みゆき」と同じ。
「みゆき」を読む中学生というのは、あの救いようのない少年マガジンの 「Boys Be...」を(てんてんはヤメロ)読む思春期中学生と 同じで想像がつくのだが、これいったい誰が読むのだ。というわけで つまらなかった。

「同時代ノート」
ここ数年の短い文章などをまとめたもの。メインは日本新党後の政治情勢と 小沢一郎、田中角栄関連。細川首相誕生から辞任、新進党結成あたりの事情を 当事者と対談しているあたり裏がわかって面白い。政治というのは政策論議を 重ねたYes/Noの世界ではなく、お金の力であるとか人柄とか集客(?)力みたいな ものの世界であるのがわかる(いい悪いの話ではない)。 どうも小沢一郎という人は人柄がよくない田中角栄という感じらしい。 マンガにすると一番面白いのはそのためか。

「笑うナース」
看護学生時代から実際の現場まで、現役(であった)看護婦が描いた 漫画とエッセイ。本音が垣間見えて面白い。が、文章は作文なみ (私よりは当然うまい)。普通の人にとって 非日常である病院で毎日の仕事をこなしている看護婦さんなので、 一般人はどうしても幻想を抱いてしまう。 そういう幻想を持っている人にはお勧め。
これまでで見た看護婦さんはかっこいい人が多かった。これも 非日常での幻想か、と言われればナニだ。たしかに仕事を している姿は誰でもけっこうかっこいいものなのだが。

「Aの愛人」
一通り見るとアラーキーの好きなタイプがわかってくる写真集。 最近ずっと出ている選集のうちの一冊。 一目でわかるこの特異な雰囲気がやはり魅力か。

「DOUGHNUTS BOOKS(31)テニスに死す」
31を買い忘れていたので買う。神戸のいやな事件の犯人が捕まった翌日の朝日新聞の マンガ。まったく同感だった。前日、マスコミの後ろではしゃぐ連中に腹を立てている 人に、彼らは健全であると、同じ事を言ったのだ。


6月

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「五分後の世界」
時計が五分遅れた世界の日本は人口26万人の地下(文字どおり地下に建設された)国家で、 ゲリラ大国であった、というお話。戦闘シーンと状況説明で中途半端に 終わってしまった。なんだかどっかの共産国の首都に住むエリート国民から 自慢話を聞かされているみたいな小説であった。

「DOUGHNUTS BOOKS(32)お高慢と偏見」
今回はOLの三宅さん大活躍。本当に楽しそうだ。政治モノは大物がいなくて 今つまらないから。

「エンド・オブ・ザ・ワールド」
短編集。これあんまり面白くなかったなそういえば。

「WIRED 7月号」
UNA Bomberの論文抄訳を番外として。 メインカルチャーであれカウンターカルチャーであれ、われわれははたして これに対抗する物語を用意できるのか、by 村上春樹って感じであった。 テロはダメよ、って 文脈がごまかすには一番。

「アフター・スピード」
「中森文化新聞」に「史上最悪の若手ライター」と以前紹介されていた 石丸元章による、スピードでパクられた後日談。 前作「SPEED」(東京で手に入らないドラッグはない)は、 覚醒剤を始めとしたドラッグ体験をイッちゃった文章によりリアルに再現した 傑作だった。人生持ち崩すほどの覚醒剤の快感とはいったいなんなのか、 というのが良くわかった。ただこれで一生手を出さないだろうなと思った。 今回はタイトルどおり、その後警察に逮捕され、 留置所→拘置所→裁判所と歩んだ偉大な数ヶ月の話で、ドラッグ話は 出てこない。
この人、4日間眠らずSをキメてふらふらしているところを不審尋問に捕まった。 画期的なひよこスープ製造法を警官に説明したりして(イッてます)、パケを 持ってることまで説明してその場で逮捕された。
留置場が案外なごやかなことや、それに対して拘置所がかなり厳しいこと、 裁判で判決が下りたその場でガラリと立場が変わることなど、 将来きっと役に立つ面白い話が多い。前作の ときは飛びまくってる文章なのでわからなかったが、この著者の 文章非常に面白く描写もすばらしい。一節だけいわゆる ノンフィクションっぽい、 自意識過剰少年の旅行記みたいな(「もの食う人々」や「深夜特急」みたいな)文章で 書いてるところがあって、書けば書ける文章力があるのがわかる。 でもやっぱこの人のこの文章でないとこの面白さは出てこない。
ということで、無事拘置所を出て執行猶予中のこの人が反省したかというと、 あとがきガンジャ一服しながら書いてるところがこれがまた。

「変節の人」
前回の都知事選は何を隠そう青島幸男に投票した。申し訳ない。 石原信雄で決まりだと思っていたので、前日までは 大前研一に入れようと思っていた。ところがどうやら 青島幸男が健闘していると聞き、石原でなけりゃいいんだから、 こっち当選したら面白いなと思ったのだ。
ところが当選してもあんまり面白くなかった。
失敗したなと思ったのは半年くらいたってからか。議会や都職員に 嫌われて辞めさせられるのを期待していたのだが、どうも歯切れが悪い。 この本は、今はなき「話の特集」の編集長による現東京都知事青島幸男批判本。 付き合いが古く、一時は中山千夏秘書として青島とも 連携していたこともあるので、それゆえに批判にも容赦がない。
でもまあ当然とも言える。彼が都知事選で期待されていたのは、もちろん 政治手腕ではなく、彼が当選してしまったという事実であるからだ。 と思ってたんだけど、投票した一人として申し訳ないとは思っている。 大前研一にやらせてみたかったんだけど(どのくらいあの偉そうに 言ってることが通用するのか見てみたかったのだ)。

「新・電子立国(6)」
未だに(4)が見つからない。6巻はインターネットと暗号の話。ジム・クラークを SGIの親分として最初に出して、Netscape社の親分として最後に出したのは、 うまい構成だったが、このへんだったらそこらのパソコンおやじでも知っている。 最初のモーションキャプチャやアポロ13の映像の話など、そこらのゲイム少年 でも当然知っていることである。感心したのはデフィーだのジーママンだの 濃いみなさんを出して暗号の問題を扱ったこと。シリーズを通しても、 鉄鉱所のソフトウェアの話など、マニアックでよろしい。
この巻で面白いのはTVでは紹介されなかった、世界で最初のデジタル映像転送の話。 火星からの200x200の64階調のデジタル映像が真っ白で、集まる世界の記者を 前に焦った研究者が、プリンタ出力した数値を一列ずつ切り取り、短冊を 繋げて一枚の絵にして(高校の英語部がタイプライタで作ったミッキーマウスの 絵を思い出す)にして、その数値を丹念に見ながら23が黒であることを発見し、 無事火星の絵を取り出したところ。画像処理とかいっても基本はこれなんだよな、 と思いました。

「バイトくんブックス(5)」
こういう学生生活ネタはだんだん廃れていくのかもしれない。 でもまだこの手の生活している人はたくさんいるのだが。 おれの部屋も汚かったしな。 東淀川大学の面々、ときおり下手なインテリより鋭いところ すばらしい。

「新科学対話」
月刊アスキーで連載されていた対話集。とても面白かった。 竹内郁雄は bitのTAOだのNUEだのの連載を読んで以来のファン。あの「ゲーデル・エッシャー・ バッハ」や「GNU Emacsマニュアル」の訳者としても有名。変わった人(だと 思う)。計算機屋さんでは数少ないグローバルな話ができる人。 旬のあるサイエンス分野のキーマンが短いながらも興味深い話を効かせる。 免疫やカオス、ゲノムの話なんかがそれぞれ混ざって自分の世界観に 影響を与えてくれる。ただ、この本だけでなく各センセイの本を読んだ方が良い。 ここに出てくる人たちは専門書ではない一般書が書けるような人ばかりだ。

「マンガ家のひみつ」
とり・みきと漫画家との対談集。ゆうきまさみ、しりあがり寿、永野のりこ、 青木光恵、唐沢なをき、吉田戦車、江口寿史、永井豪、吾妻ひでお。 しりあがり寿のがやはり面白い。まじめなのである。 あと永野のりこという人、ヤンマガで おたく系の好みではない絵にも関わらず、妙にテンション高いオタク少年の 独白が面白かったのだが、本人もなんだかテンション高い。 しかし、1994年の対談が今出るのでは遅すぎる。やっぱり1995-6年っていう のは重要な年だったと思う。もちろん漫画家にとっても(直接ではなくても、 変わらなかったというのも重要ではないかな)。
吾妻ひでおの話で、失踪してホームレス生活をしていて、警察に 保護されたとき、彼が漫画家の吾妻ひでおだとわかって、ファンの警察官 からサインを求められたんだが、その警察官が「夢」と書いてください、 と言ったという話、面白すぎ。

「すべては愛に」
サブタイトルは「天才ピアニストデヴィッド・ヘルフゴットの生涯」 タイトル恥ずかしい。久しぶりにのめりこんだ映画「シャイン」の影響。 二度見て生涯ベスト1か2位と決まる。映画は実在のピアニストの話。 少年が屈折した愛情の父の元で育ち、天才ピアニストとして騒がれ ロンドンに留学し、その中でどんどん精神を病んでゆき、 そして復帰していくストーリー。成人のヘルフゴットを演じた ジェフリー・ラッシュという俳優さんはアカデミー主演男優賞を受賞。 映画のエピソードがすべて本当で 驚く。映画よりも実際の方がお父さん屈折してるのと、復帰のきっかけと なったワインバーの経営者は、精神科医であることくらいが違うところか。 ギリアンというのは奥さんなんだが、映画ではあっさりと描かれていた 結婚後の復帰までの道がそれこそ映画一本分くらいの道のりがあったことが わかる。もっとも、そこを映画では強調しなかったゆえに私の琴線に触れたのだが。 映画も構想から10年近い歳月がかかっている。映画がよかった人には 面白いと思う。

「魅惑のフェロモンレコード」
元祖マイブーマーみうらじゅんのB級C級レコードジャケットを集め、 解説したもの。恐ろしいほどのキテるジャケットの膨大なコレクション に笑える。そもそも変なのは当然なのだが、当時普通と思っていた ジャケットが、今見るとそのあまりにあっち系なことに愕然とすること のほうが面白い。当時当然であった あのピンクレディー(そもそもこの名前からいってすごいな)も、 今見るとすごい。

「『超』知的生活法」
つまらん。
以上。

「女(わたし)には向かない職業」
朝日新聞でもっとも硬派で読み応えあるのが「となりの山田くん」あらため 「ののちゃん」である。これを読みたいだけで朝日新聞を取っていると いっても過言ではない。週刊文春と比べて全国紙の朝刊なのでかなり 毒を抜いてあるんだが、政治ネタでなくても十分毒がある。「風刺」という 言うも恥ずかしい言葉だが、家族ネタでこれだけ笑わせるのはない。
で、これはここ半年くらい活躍しているののちゃんの担任の藤原先生を メインにしたもの。やる気のない先生なんだけど妙にリアルで微笑ましく 暗い。柴門ふみあたりにこのきっといないんだろうけどいそうなリアルさを 参考にしてほしい。なおこの単行本では藤原先生は、推理小説の新人賞を取って 先生をやめて作家になってる。

「オンリー・ミー 私だけを」
ミュンヘン在住の イザールさん の感想を読んで買う。例の幻冬社文庫。 東京サンシャインボーイズの、今TVドラマでも旬の脚本家三谷幸喜 (最近は遅筆で有名)のエッセイ集。 普通のドラマとは明らかに違うシチュエーションコメディ みたいのが得意で、面白いのを書く人なのだが、やはりちょっと文章が 書ける俳優あたりの文章と一味違う発想があって面白い。
UFOキャッチャーの極意「とると思うな、助けると思え」とか、 事務所に書いてあるという 「大風呂敷は広げない。広げたときは責任をもって畳もう」 このへんのセンスがすばらしい。

「どばくちさいゆうき」
おなじみの西原理恵子、山崎師匠、白夜書房のスウェイ((c)赤瀬川原平)氏などが アンダーグラウンドな賭博(「全国のダイエーよりも多い広域暴力団が 経営してるバカラ屋だから安心だよ」のセリフの説得力)にはまる話など。 ギャンブルはやはりこれくらいやってこそギャンブルといいたい。 だから恐くて手を出さないのだ。面白い。

「あの人の手帳が見たい!」
なんかこー、ここに書いてあるチェックポイントを読んで参考にして しまうような人はやだ。「なんとか法」とか名前つけちゃう人も苦手だ。 それで本を書いちゃうような人も身近にはいてほしくないし、 それを読めと人に勧めるような人も勘弁してほしい。 なんだか手帳の使い方ごとき自分でなんとかしてほしい。
大学生のころはまわりはみんなシステム手帳を持っていたが、僕は スケジュールというほどのものはないので新潮社の手帳をカレンダー 無視してメモとして使っていた。大学院に入ったら課題が多くて 締め切りがわけわかんなくなってきたので、チープなシステム手帳を 買って、2ページ一月のを使っていた。これで困ることはなかった。 社会人になるので、ふふふのふ、手帳アンド名刺社会に ついに俺も仲間入りだぜ、1ページ1週間の変えてみたが、 毎週課題が出ていた院生時代よりも記録すべきスケジュールが 少なくなってしまったので、 また学生時代の2ページ一月に戻した。スケジュールがないわけでは なくて、一つのプロジェクトでも細かく厳しくあるんだけど、 何時に誰にあって何日何時までにこれをやって、という感じでは ないのだ。 他は普通のメモみたいなのを挟んであるだけだ。
結局管理すべき情報がメモ++くらいで間に合うものだからだろうか。

「空の名前」
売れているらしい。 空の色は毎日違うし、雲も違う。ときどきぼーっと眺めることがある。 そんな空の雲、雨、雪、風、季節の名前をきれいな写真とともに ならべた本。猫犬的雨みたいな即物的なのではなく、日本語にはたくさんの 雨の名前があると言われるが(他の言語は知らないのでよく知らない)、 いやしかし自分は魚や草や花の名前を知らない人間とは思っていたが、 空や雨の名前も本当に知らない。 ちょっと目に付いたものをあげても 「問答雲」「畝雲」「菜種梅雨」「梅若の涙雨」とたまらん。 こういうのは売れてるとうれしい。「宙の名前」ってのも出てる。

「HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP」
活字にしても面白いのと、TVで見たときは笑えたのに活字だと笑えないのが ある。でもこのお話がやはり面白いので、気になるミュージシャンが出るときは ビデオで見てしまう。

「もの食う人びと コミック版」
辺見庸の「もの食う人びと」にストーリー つけて漫画化したもの。で? って感じだ。企画倒れ。もとのがよかっただけに よけいに、で? って感じだ。

「遠くへいきたい」
とり・みきの9コマセリフ無しの漫画。なーんにも面白くない。金の無駄。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(102)」
商店街のテーマソングを作るのに、例によって中川のコネでミュージシャン集めると、 両さんが「We are the world」作ってるんじゃないんだから、っての面白かった。 あとこの巻の第8話で1000話だそうだ。すばらしい。なお、 GI両さんは本当によくできていた。

「MONSTER(6)」
あんまり面白くなかった。暗殺されかけたおじさんのテーブルクロスのところが よかったけど(安易なヒューマニズムを求めているのでしょうか)。

「きらきらひかる」
ホモの医者と(その恋人と)アル中の新婚夫婦の話。 節ごとに語り手が交代し、 些細なエピソードの積み重ねていってあるしっとりした雰囲気が できていくのだけど(エピソードはそれなりにハードである)、 面白くなかった。アル中で精神的に不安定な 女性がよくわからないせいだと思う。江國香織は「つめたいよるに」が 一番いい。

「ロック名盤カタログ」
ロッククラシックのいいところは外れが少ないところ。 だからつまらないところも多い。リアルタイムで聴いていくことも 大事にしたい。とりあえず今はKULA SHAKERはまり中。 まー、たかがロック。"It's only Rock'n Roll" ってやつ。


5月

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「TOKYO STYLE」
(旅の極意はクルクルパアにあり。だから) 「珍日本紀行」の人は「TOKYO STYLE」の人だったとは 知らなかった。狭いだの高いだのいわれる東京の若者の部屋を、 そのままの形で写した写真集。「珍日本紀行」と同じで1万円以上して 買えなかったのが文庫サイズの廉価版で登場。やっと見つける。 部屋も撮影用に掃除しているわけではないそのままの姿は、 持ち主が見えてくる。昨年の引越しの前に、足の踏み場も無い 六畳間の写真を撮っておいたのだが、見かえすと本当に汚く狭い。 6万も家賃したのだけど。当時も狭くて家賃も高いと思っていたけど、 でも便利で機能的だった。 あれはあれでまさに「東京風」だったのだなと思う。
しかし今月は読みすぎ。気が狂ってる。 同時進行で読んでいた、ここには載せない計算機(お仕事) 関係は「Core Java」ぐらいだった(しかも半分)。6月は計算機関係の方に比重を 戻す予定。

「アイデン&ティティII マリッジ」
前回の「アイデン&ティティ」はディランだったが、今度はレノンとヨーコが 現れる。バンドブームを地味に生き残り、中島君のバンドはこんどはドラマ の主題歌を歌うことになる。再びメジャー化への流れの中で悩む中島君を レノンとヨーコ(二人の新婚旅行のあの白いスーツのイメージで現れる)が 見守る。日本語の「愛」ではなく、 ジョン・レノンの"Love"ってなんだろうという、よく考えたら 恥ずかしい内容なのだが、みうらじゅんのぬめっとした絵で ロック漫画の傑作になっている。
「ドラネコシアター 2nd collection」
元女子高生漫画家らしい些細なギャグ。ちっちぇー絵でちっちぇー文字、 つまらん日常がとても可笑しい漫画。 ネズミがよろしい。

「坊ちゃんの時代第四部 明治流星雨」
ずっと「週刊漫画アクション」の連載を読んでいたのだが、単行本の 方はこの第四部がずっと見つからなかった。やっと見つけたので買う。 荒畑寒村、幸徳秋水、菅野須賀子の大逆事件へ向かう運命が描かれる。 アナーキストの僧侶内山愚堂が出てきてうれしい。

「完全版藤子・F・不二雄の世界」
藤子不二雄が二人に別れて、二人の傾向がやっとわかった。プロゴルファー猿みたい な暗めのやつがAでドラえもんに代表されるポップなファンタジー系がFだったのだ。 大人にはAの方がブラックな笑いだというが、あのわらうセールスマン程度の ブラックさだったら他の媒体でもいっぱいあるし、他の漫画家よりも 優れているとは思えない。貴重なのはやはりFのポップさだと思う。だから 僕の方はFの方が好きだった。先ごろ亡くなったFの方の代表作品を まとめたもの。

江國香織「こうばしい日々」
二つの物語。一つはアメリカに駐在する一家の小学生(米国籍)の話。 なんてことはない話。もう一つは短編の連作が一つの物語になっている。 小学生→中学生の女の子の話。なんてことはない話。小中学生 向けといえばそういう気がするし、そのまま大人にマップできる 気もするし。とにかく読後感が妙なだけなのだ。 ちょっと物語りが足りないような気もする。 それが不思議な後味を残してるのかもしれない。 あと、この人基本的に悪人は書けない人なのかもしれない。 というわけで今江國香織がマイブームである。

江國香織「つめたいよるに」
児童文学の人(かつ江國滋の娘の人)とばかり思っていた。 20くらいの短編。主人公は犬、子供から老人 まで。数ページの話なのに妙な後味が残る。すばらしい。ちょっとこの人の 作品まとめて読みたくなった。女子中学生が家庭科の課題ができなくて、 居残りの教室にいる。時間と空間が数行ごと進みやがて老人になり、 ふと友達に呼びかけられ中学生に戻る。恥ずかしながら心ぐらぐら揺らされて しまった。だまされてるのかもしれないがいいのだ。

「オルタ・カルチャー」
オルタナティヴ・カルチャーについての事典みたいなもの。URLなんかもついている。 翻訳の時差があるが面白い。ドラッグ、音楽、メディア、政治、吉本ばなな等の さまざまな情報。自分が明るい分野はたいした情報ではないが、知らない分野が 読んでいて楽しい。

NHK-BS「まんが夜話」
これは番外。BSで、大月隆寛司会、いしかわじゅん、夏目房之介、岡田斗志男、 えのきどいちろう、という濃いメンバーが出ていて、なにかと思ったら 漫画の話をしていた。たとえばいしかわじゅんの漫画を一度も面白いと思ったことは ないが、彼が責任編集をしたというアクションの増刊は、好きな漫画家ばかりだった。 で、なぜ面白いかという分析はどうでもいいんだけど、意図している、いないに 関わらず、作画の技術的な話がなぜ新しいのか、読者を惹きつけるのか、という 分析が新鮮で面白い。

筒井康隆「邪眼鳥」
断筆宣言以来復帰第一作。著者と新潮社の間で交わされた用語規制に関する覚え書きも 最後に載っている。実際「びっこ」や「かたわ」などという言葉もあった。 が、事情を知らなかったら気づかなかったかもしれない。これらの 言葉に対して不快に思う人がいるのは著者は重々承知している。抗議する 権利も認めている。筒井康隆がが戦ってきたのは、ただ自主規制の名において、 書けない言葉がある、という不自然さだったのだと思う。
「邪眼鳥」は遺産相続を巡る残された兄弟の話。時間と場所が ある文章で突然移るのだが、それを読解力が無い僕でも理解して ついていける、彼でしか書けない物語空間を堪能できる。 復帰。

「哀しい予感」
米国のオルタナティヴカルチャー本にも載っていた吉本ばなな。 親父さんとの対談読んで、読みたくなったのがこれ。 若いなーという感じで面白い。たいした小説じゃないとは思うのだけど。

「本の運命」
井上ひさしの幼少期から現在に至るまでの本に関わる話。 本の内容はほとんど触れず、書物との関わりについて書いてある。 一番多かったとき彼は13万冊の本を持っていたそうだ。 これ杉並中央図書館の蔵書数と変わらないんじゃないか。 こういう人だけを読書家とか活字中毒者とか知的好奇心に 満ちた人と冠したい。
後半電子ブックやインターネットに不安を覚えているが、大丈夫である と断言したい。マニュアルや辞書や資料や統計のランダムアクセスと リンクは書物に勝っている部分があるくらいかな。 技術的事務的資料的同時代的文書とそのほかは区別しなければならないと 思う。どちらかと言うと(いつかわからないが)新聞の方が衰退が先だと思う。

「トンデモ超常現象99の真相」
わしきたくんの 読書欄で見たので買う。 「1996年のベストセラーは、脳内革命、神々の指紋、猿岩石日記、の三大インチキ本 であった」という始まりが可笑しい。ト学会の連載があった「宝島30」も 「科学朝日」がなくなっちゃったのと対照的である。
「イースター島の巨大像」「ナスカの地上絵」「ノーチラス号のESP実験」 「ダウジング」「バミューダトライアングル」あたりの話、小学生のころ 心ときめかした。この辺の有名なのから、最近の「神々の指紋」関連まで、 「伝説と真相」の形で反証してみせる。バミューダ三角地帯の話の真相読むと、 いや別に信じていたわけじゃないけど、そういうもんなんだと思っていたので、 そうなのかー、という感じで(わけわからんか)感慨に更けって しまう。面白い。
ト学会は好きだが、たとえばこの本の中にもしうそが書いてあっても僕はわからない。 読む自分自身にとってはどちらも二次情報なのだ。検証するってことはパワーが いるからト学会の検証を検証することは僕にはできない。ト学会はトンデモ本を愛して いるんだなと思う。

「WIRED」
番外:「宝島30」なきあと爆笑問題を見かけていなかったが、「日本原論」が 売れたためか、なんと「WIRED」で1997年6月号から再開した。 「ネクタイゆるめちゃったりなんかして」のあたりの畳み掛けがすばらしい。

「末広町35番地」
「わさび」の一條裕子。不条理っぽいのやら、しヴいやつやら、面白い。 一部高野文子っぽいのもあるが、それ以外は真似事でない独自の世界を 築いていて面白い。8割で止めているのなんかとくに。

「ねじまき鳥クロニクル(1)泥棒かささぎ編」
「ねじまき鳥クロニクル(2)予言する鳥編」
「ねじまき鳥クロニクル(3)鳥刺し男編」
「世界の終わり〜」では2つの物語が一体になっていく興奮を味わえたが、 こっちはどんどんいろんなエピソードが拡散していくようで(読んでる俺の 頭が悪いのか)、最後の方で主人公がクミコに「わけがわからないんだ」と 言うところでブンブンとうなずいてしまった。通して読むのは二度目だが、 やっぱり同じ。なんだかつながるようなつながらないような。 笠原メイが一番謎か。
長編を一通り読み直したので村上パルキ週間をこれにて終わる。

「空飛び猫」
翼を持つ猫の兄弟の絵本。講談社文庫の村上春樹のところにあったので買う。 とても難しい。

「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」
週刊朝日連載のまとめたやつ。この連載をしている間に 村上春樹はアンダーグラウンドのインタビューを続けていたそうだ。 リラックスしていて面白い。
空中浮遊の夢僕もよく見る。僕の場合は、2mくらい浮いたところで 下を向いているのだけど、自分の肉体は存在していない気がする。 泳ぐとか自力で浮いている感じはない。イメージとしては、 プールに浮かんで下を向いていると、プールの底面に自分が 寝ているという感じ。
インターネット上に 村上朝日堂のページがあるが、 よくある「とりあえず作りました」的なものではなく、たくさんの 読者のメイルに、まめに本人自ら返事を書いているので (現在も進行中)驚いてしまった。 仕事している余裕はあるんだろうかと思うぐらい。肩の力を 抜いて書かれているので、気楽に読めるし、更新も頻繁なようなので いつでも近況が読めるので(最近はボストンマラソンに参加したそうだ)、 ファンの人にはたまらないでしょう。
僕は読者ですがファンではないです。

「クーデター」
テーマが好きなので面白い。明快な主人公がいないのは、自衛隊が治安出動 するような事件は多角的に描写するしかないからか。 が、結末へ向かうあたり、カメラマン大活躍がリアリティなくて 御都合主義に思えた。文章のセンテンスが長くて、主語がわかりにくく 悪文に思えた。せっかく多角的に書くんだからもっと文章もスピード感が あったほうがいいと思う。

「チョコレート革命」
「サラダ記念日」は出た日に買ったのが自慢だ。ノルウェイの森と同じ 年だった。角川短歌賞だったかを取ったのを偶然知って、口語短歌という のを初めて知って、たぶん本の雑誌の井狩春男のページで短歌集が出ると 知って、待っていたのだ。初版は(短歌としては異例だが)5千部程度だった という。3件くらい本屋をはしごして、すみのほうにあるのをやっと見つけた。 (もちろん平積みもされてなかった)。
で、そのときは大変な感銘を受けたのだけど、今回はそんなことはなかった。 優劣がわからないのだ。いくつか付箋を挟んだけれど、10年後に(下手すれば 明日にだって)その句に感動するかはわからない。なお、あとがきの最後の方が ちょっと良いなと思った。

「イエローページ村上春樹」
チャート式のように図表を交え、一文一文を検証していく評論というより分析の書。 「1973年のピンボール」で、ああ鼠は死んだってことかなー、とか思っていたのだが、 そういうレベルではない。ご苦労様と言いたい(皮肉ではない)

「国境の南、太陽の西」
村上パルキ週間続く。長編にしろ短編にしろこの作品が一番肌に合わない。 主人公が青山にすんでBMWに乗って私立幼稚園に行く娘がいてアルマーニを 着ているからではないと思う。わけがわからないからだ。どうしたもんかなー、 と思っていたらあのクソ長い「ねじまき鳥クロニクル」でさらに混乱したので あった。ねじまき鳥はすでに三冊また買ったのでこのあと読む予定。

「Quick Japan Vol.13」
番外: 相変わらず濃い。 消えた漫画家は消える前から知らない人だが、オウムの 宣伝用アニメーションを作ってた元信者のインタビューが面白かった。 その絵柄がダサいと思っていたのだが、作り手の趣味ではなく、 松本知子被告の趣味でああなっていたというところ。 少女趣味だったそうだ。

「別冊宝島315このゲームがすごい! プレイステーション編」
最近の別冊宝島はつまらんのが多すぎ。これはゲームライターでない人が 紹介文を書いてるのは新鮮なぐらい。なお、しりあがり寿の「底ぬけFFライフ」と 原田知子の漫画はすばらしい。原田知子というのは「SPA!」の中森文化新聞で、 オウム騒動全盛期のとき、天才的な毒にあふれた漫画でデビューした人なのだが、 FFVIIのエアリスをああ書ける人は(ヤンキーとして書いてる)なかなかいない。 すばらしい。

「新ゴーマニズム宣言(2)-(3)」
しばらく興味を失っていたのだが、久しぶりに読んでみる。 薬害エイズ訴訟からその母体の民青かや、従軍慰安婦問題と教科書問題など。 初期と比べて面白くないのは、小林よしのりが変わったからという気もするが、 ただ自分が飽きただけというのも自覚している。それでも今、 これを読んで手紙を出すような人は、本人が一番嫌ってる学級委員 というか民青的な奴ぐらいじゃないかな。

「スターダストメモリーズ」
単行本未収録作品を集めたもの。未収録のままでおいた方が良いものが多い。 星野之宣はあたりはずれが多すぎる。

「俺の空(1)-(4)」
男一匹ガキ大将でも俺の空でも基本は一緒。本宮ひろしは今読んでも 十分面白い。あのヤンジャンに載ったUFO編はどう考えても失敗だったが。

「ロック」
なぜか岡崎京子の漫画が多くおいてあるローソンで買う。これは 読んだことなかったがつまらなかった。

「あなたにあげる」
赤星たみこの新刊出ていたので久しぶりに買ってみる。もうずいぶん 「週刊漫画アクション」を読んでいないので何してるか知らないのだ。 つまらなかった。立花精肉店は笑ったが。

「ノルウェイの森(上)(下)」
出てすぐ買った覚えがあるのだけど、当時は(それまでの村上作品に比べた せいか)リアルな描写であまりに暗く感じたので あんなに売れるとは思っていなかった。 あらためて思ったのだが緑と直子の描写がいいんだと思う。静と動の対比も (紋切り型で失礼)。俯瞰している玲子さんの存在も捨て難い。 しかし最初読んだときどーんと暗くなったのが懐かしい。 個人的には療養所の描写が昔を思い出して複雑な気持ちになる。

「ダンス・ダンス・ダンス(上)(下)」
久しぶりに通して読んでみると、 主人公はユキやユミヨシさんに対して饒舌で「風の歌〜」に比べると ずいぶん大人になったように見え、著者も文章をのびのび書いている気がする。 でもあの暗い「風の歌から」より重い読後感が残るのはなぜだろう。 結末は明るいのだけど。

「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」
間違えて上巻を二つ買う。以前読みたいと言っていた人にあげた。 小説としてはやはりこれが一番面白い、すごいなーと思う。「世界の終り」と 「ハードボイルド・ワンダーランド」の両方の世界で頭骨が光るシーンが いつも寒気がする。

「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」
「アンダーグラウンド」の前に読んでおけばよかった。かんそー文で書いた、 社会と関わり合いを遮断しなくなったのでは、 ということについて「デタッチメントとアタッチメント」という言葉で 本人がすでに語っていたのであった。 また、河合隼雄の、欠落を埋め合うのではなく 互いに認識する(それは苦しいことである)、みたいな言葉が面白いと思った。

「羊をめぐる冒険(上)(下)」
「1973年のピンボール」
「風の歌を聴け」
「アンダーグラウンド」の意外さもあって、 ↓の評論を読んだら、 また読みたくなってきたので文庫本で買う。初めて読んでから もう10年以上たつ。前回だだっと読んだのは「ねじまき鳥」のころか。
この3作品の中では「ピンボール」「羊」「風の歌」の順で好きだったのだが、 今回読み直してみたら「ピンボール」はまったく面白くなかった。どうしてだろう。 主人公にまったく感情移入できなかった。気になった文章のページに折り目をつけるのが 癖なのだが(他人の本ではやりません)、折り目が一番多かったのが「羊」であった。 一部の文章はしばらく反芻して泣いた(うそ)。
自分はちょうど「羊をめぐる〜」の「僕」と同じ歳なのだ。 初めて読んだ10代のころと比べて大人になったとはとても思えないが、 ずいぶんたくさんのものを失ってきた、失いつつあるとは感じる。 だから20歳の「僕」より29歳の「僕」の方に共振してしまったのかもしれない。 現実逃避の読書のつもりが、 思ってもいなかった現実が表面化してしまったか。なんて。
「世界の終り〜」も買って 「ダンス〜」も「国境の東〜」も文庫本になってるとわかったので、 しばらくパルキ週間とする。「ねじまき鳥〜」引越しのとき処分するんじゃなかった。

関係ない話だが、華々しくディスプレイしてある幻冬社文庫と対照的に、 ひそかにハルキ文庫というのが並んでいた。こっちは角川春樹である。

「群像日本の作家(26) 村上春樹」
村上春樹がなぜ「アンダーグラウンド」を書いたか、 などと偉そうにそれなりに推測したのだが、ちょうど最近出たこの本を見つけたので、 読んでみた。これまでの村上春樹に関して書かれた評論をまとめたもの。 さまざまな村上春樹論があり、それぞれうなずくところがあり面白い。 「ダンス・ダンス・ダンス」の 「踊るんだ。何も考えずに、できるだけ上手に踊るんだ」というテーマ(ゼ)を 思い出し少し泣いた(うそぴょーん)。

「戦後ハイジャック全史」
戦後初のハイジャックは1947年ルーマニア軍将校三人によって行われたそうだ。 それから、つい最近の、休職中でありながら高給をもらっていて顰蹙を買った銀行員のハイジャックまで含めた、1080件について分析したもの。 ハイジャックの特異日は、などという意味のないデータもあるが、ハイジャックの 傾向、目的の移り変わり、各国の対応など詳しくて面白い。 ハイジャックはやってみたい犯罪の一つだが、今ではかなり難しいとわかって 残念である。亡命先もないことなので、しばらくはやめておこうと思った。
なお、二年前の朝日新聞でバスジャック事件のキャプションに「ハイジャックされた バス」とあるのを見て、すげーミスと思って念のため調べたところ「ハイジャック」と いう言葉は英語圏でも特に航空機に限って使われている言葉ではないそうだ (友達の女の子にOEDまで調べてもらった)。

「常識論」
ここ5年くらいの間に書いた文章を集めた本。たわいのない話が多い。 しかし僕はおそらくほとんどの文章を、 執筆者の名前が隠されていても赤瀬川原平と断定できる自信がある。 ちなみに南伸坊の装丁が笑える(「新解さん」の引用になっている)。

「フラン県こわい城(2)」
あいかわらずイモトネ最高。ちんこクラブの活動も相変わらずすばらしい。 終わってしまって残念だ。

「好き好き大嫌い」
岡崎京子の初期の短編を集めたもの。高校生ものなど、完全に物語として 読んでいる自分に年月を感じる。コンビニに岡崎京子の漫画だけが 並んでいるのはなぜだ。

「人間臨終図鑑(1)」
昔箱入りで出ていて高価で買えなかった本の普及版。年齢別にあらゆる歴史上の人々、 著名人の最期の姿をならべた本。とくにこの第一巻は15歳から55歳に死んだ人々が 並んでいる。今の自分と同じ歳で死んだの人が気になる。映画監督山中貞雄、連合赤軍の森恒夫、源義経、「嵐が丘」を書いたエミリー・ブロンテ、大逆事件の菅野すが、 プロレタリアート兵器蟹光線!の小林多喜二、中原中也、吉田松陰。 僕の30年は凡庸なりにいろいろあったが、 天才奇才たちの人生の濃さに嘆息する。

「自由なれど孤独に」
森雅裕の(へ)楽聖小説。シューマンの亡霊を見たというワーグナー にブラームスが陥れられるという小説。舞台はウィーン。主人公はブラームス。 ちょっと前にこの人の刀剣ものを読んだと思ったら今度はこれだ。 すばらしい。 ワーグナーはわかるがシューマンもブラームスも曲が浮かばない私にも 楽しめる小説。根はモーツァルトシリーズと同じ。 ブラームスの弟子で近衛騎兵連隊クリスタ・アムロート大尉(女性)が凛々しい。

「遠い太鼓」
二ヶ月くらいかけて少しずつ読んでいた 村上春樹がギリシャ・イタリアで約三年間すごした日々の旅行記。 「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」を書いたころ にあたる。思うほど優雅でうらやましい暮らしではなく、というよりかなり 焦燥が目立つ。日本の都市部のような機能的なところで、 日本人というなれた気質の人間の中ですごしていると、 こんなに違和感というものがあるのかと面白い。 このへん「アンダーグラウンド」への布石があったのかもしれない。

村上春樹「アンダーグラウンド」
感想はこちら

「新ニッポン百景」
二年前に読んで古本屋に売った本だが、また読みたくなって買った。「衣食足りて 礼節を知り得ぬ日本」について、呪詛を撒き散らす矢作俊彦の文章は、鋭くまた 諧謔もあって楽しい。こういう才能を持った彼が都会人でよかった。

「会津斬鉄風」
森雅裕の歴史・刀剣もの。刀鍛冶兼元から唐人お吉、土方歳三まで、 それぞれが主人公となる連作小説。歴史のことはよく知らないので 弥生時代から太平洋戦争までに何があったか知らない。 弥生時代のあと平家と源氏が争ってたのを、徳川家康が 間に入って国を治め大平の時代になったが、黒船から降りてきた チャーチルが新選組の東条英機と太平洋戦争を 始めたということにしている。 そんな歴史がさっぱりわかっていない私にも 面白く読めるところが、 森雅裕のすごいところ。ただ得意の、生真面目純粋ゆえの不毛さの 描画が少なかったので残念。

「奇妙な果実」
タイトルは虐待され木に吊られた黒人を歌ったビリーホリディの曲からとったものだが、 この本は「週刊地球TV」という番組のコーナーをまとめたもの。 海外で見つけた変な日本を紹介するもの。正直なところできそこないの「VOW」という 感じで面白くないコーナーであった。単に 東京では「タモリ倶楽部」のちょうどあとで、小西克弘と高木美也子という マニアックなキャスターだったのでよく見ていた。コーナーを担当するのは、 私が尊敬するHufutewissenschafter山田五郎だったというのもある。 番組では山田五郎がわけのわからない蘊蓄をたれるのがよかったが、この本では、 章ごとに短い文章があるだけだった。

「疑惑は晴れようとも」
松本サリン事件の第一通報者の会社員の手記。 ある日、原因不明のまま松本サリン事件にまきこまれ、 意識不明の状態に陥り、目が覚めたら 犯人になっていたという恐ろしい体験。警察もマスコミもひどいもの だが(特に中日と地元警察と関係の深い信濃毎日)、当時 「化学系オタクってのもタチが悪いなー」とか勝手に 思っていた自分も偉いことは言えない。 警察がその存在理由からいってこうなるのはわかるが (自分がそんな立場に追い込まれてもそんな余裕かましている 自信もないが)、 いつも正義の立派な大新聞社の歯切れの悪さがカッチョわりい。 犯人扱いされたのも偶然だが、冤罪が晴れたのも偶然というところが やはりこの本の一番怖いところ。

「吉本隆明×吉本ばなな」
うっかり死亡記事になりそこなったお父さんと娘の対談。 家族のお話なのでそうは面白いわけではない。ただ、 吉本隆明の方の昔の話が今の私にはちょっとやだった。あと 間に挟んでる渋谷陽一が吉本ばななの小説の喪失感を 現代ロックのテーマであると思わず語っているあたり、 笑える。吉本ばななのデビュー以前の感覚に共感を覚えたが、 だからといって珍しい話ではない。

「自分の死亡記事を書く」
ダ・ヴィンチの特集をまとめたもの。特集としては面白かったが、 本にして読むと大した事ない。「死を想うひとにだけ、 美しく生きる資格がある」という帯。そうかー? 事故で死んだり、殺されたりしなければ死亡記事は出ることはないだろう から、もし出るとしたらどういうのがいいかなーと思ったが、 不毛なのでやめておいた。死に方としては苦しまないのがいいとは 思っている。時期は今すぐでもかまわない(なんちゃって)。

「セレスティーヌ」
熊のアーネストがねずみの赤ちゃんセレスティーヌを拾う絵本。 こげ茶色のパステルで描いたデッサン風の絵が心休まる(かは どうかは実は自分次第)。 連続画で描かれるセレスティーヌが動いているように見える。

「コンバットバイブル」
米陸軍の兵隊さんの教科書的な本。軍人さんもこれらを理屈ではなく、体で 覚えるまで訓練し、いつでも出動できるようにしているのだから大変だ。 明るい漫画の絵で、首筋にナイフを刺す方法を書かれたり、手榴弾投擲や 機銃掃射の方法を描かれちゃってもなー、という感じだ。この本、コンビニに あったのを買ったのだが、機関銃の正しい撃ち方が書いてある本なんて誰が 買うんだろうか。

「自由な仕事と稼げるパソコン」
独立して自宅や小さな仕事場(SOHO)で一人で 仕事をするような人向け、もしくはSOHOについて具体例を 知りたい人向けの本。僕は今のところそういう気はまったく ないので、マイクロソフトがExcelの開発を 技術者たちが自宅にいるまま行なうようになるまでは 関係無いと思う。今いる会社がかなり自由なところがあり、仕事以外の 無意味な制約が少ないからかもしれない。 「連帯を求めて孤立を恐れず」って感じ(違うか)。

「電脳売文党宣言」
昨今の一般でのインターネットブームを含む電子メディアの 急速な発達の中での作家たちの姿について語られた本。 癖のある人たちばかりなので、単純な礼賛ではなく安心したが、 でもこの人たちもまだ楽観的のように僕には思える。 この人たちが書き手として存在するくらいの間は、 まだ旧態と変わらない活字メディアによる「売文」が十分に 成り立っていると思う。
しかし、脚注に「デリタ」「フーコー」だの「死霊」と 一緒に「ftp」や「マクロ」の解説が並んでいるとは すごい時代になったものである。

「with t 小室哲哉音楽対論 Vol.1」
小室哲哉の曲でいいと思ったのは、TRFの「寒い夜だから」 (坂本冬美に歌わせたい)とH Jungle with tである。 それにglobeの曲がすごいなーと思って聞き入ったことが ある。ただCDは買ったことはない。だから残念ながら 僕は小室哲哉の「マーケティング」の対象ではなく、 「仕掛けられる」相手でもない。「ユーザ」(!)でもない。
でもこの本の元となった深夜TVの「TK MUSIC CLAMP」は よく見ていた。ゲストとの対話が面白かったからだ。 これは興味深いという意味だけではなく、つまらなかったり、 笑えたり、そういうこと言うかー、と思えたりするのが よかったからだ。このvol.1では小林武史、桑田圭祐、坂本龍一など が登場している。 「マーケットをコントロールする力」とか「Transposeキーを 押したら面白かった」(転調が多いのはだから)とかギターに コンプレックスを持っていた話とか一部面白い。
ちなみにこの対論集は幻冬社文庫の第一回配本の一つ。 (幻冬社というのはつかこうへいの日記によく出てきた 元角川の見城徹という人が作った出版社) 角川文庫のつかこうへいの日記いまほとんど絶版だから そういうのも出してほしい。
「トマソン大図鑑空の巻」
街の無用物件を集めた大図鑑のその2。地の巻と同じく、写真のみならず解説も 面白い。「蒸発」や「もの食う木」あたりが好み。

「with t 小室哲哉音楽対論 Vol.2」
「TK MUSIC CLAMP」のゲストとのお話をまとめたのその2。 面白かったのは、CharのときのL.A.やハリウッドは日本よりも 芸能界っぽいという話。小室哲哉が清志郎に 「時代を読んで動いていますね」と聞いたら 「ほー、素晴らしいですね」と (わはははは)答えたところ。

「名画読本日本画編」
西洋画よりもさらに素人には鑑賞が難しい日本画について赤瀬川原平が 解説している。面白い。広重、等伯あたり、自分で画集を買ってみたく なるくらいいい絵だと再発見。写楽の役者画で、深爪がすぎないか、と まで言及する赤瀬川節もすばらしい。
「with t 小室哲哉音楽対論 Vol.3」
「TK MUSIC CLAMP」のゲストとのお話をまとめたのその3。 面白かったのは徳永英明がかなりヘヴィな状況に一時いた話、 globeのアルバムを出す日に対する小室哲哉のプロデューサ的もくろみの 話など。3は中身が薄かったような気がする。

「with t 小室哲哉音楽対論 Vol.4」
「TK MUSIC CLAMP」のゲストとのお話をまとめたの最後。 面白かったのは岡村靖幸のベルファーレのお話、小室哲哉が すでにプレスされたCDを聞いて、フェーダをうっかりちょっと 滑らしたのを思い出すことがあるという話、朋ちゃん(笑)、 プログレをやってみたいという話(でもマーケティングが、 とか言っているが、今小室哲哉がプログレアルバムでも出せば 世の中一大プログレブームが来るかもしれんではないか)。
このシリーズ全部に関しては、ゲストよりも小室哲哉が どういう人なのか(想像通りであった)よくわかって面白いかも しれない。
「沙流羅(3)」
自分の子供を捜す母の話。ついに長女と対面。巧い絵としっかりした物語背景で、 十分及第点ながらものめり込まなかったのはなぜだ。

「問題外論(11)」
MRTAもの面白いがまだ解決していない状態でこの漫画を描ける人はいしいひさいち だけだろう。人質となった親と子の往復書簡もいいけど、なぜこういう事件が 起こったのか、ペルー情勢はいったいどうなっておるのか、ということが さっぱりわからなかった。そんなメディアへの強烈な皮肉である。 占拠事件は解決したが、で、いやホントの話ペルーの刑務所って そんなひどいの? という疑問に答えてくれるメディアは少ない。 小泉純一郎も思ったよりネタになったときの存在感がない。

「電脳なをさん」
Macネタ。アヴァンギャルドではあるがあんまり面白くない。

「娘に語る祖国 従軍慰安婦編」
従軍慰安婦というテーマがテーマなので、つか流の冴えがいまいちだった。 しかし「教科書が教えない歴史」が きっかけとなった「自虐史観」(←この言葉も「従軍慰安婦」と同じで 論点がぼけやすい)の見直しや、従軍慰安婦の保証問題などで欠けている なにかについてこうやって書けるのは彼だけかもしれない。つかこうへいが 描くのは、現在の論議の中で不幸とされている慰安婦、そして慰安婦を必要と していた日本の二等兵である。こういう人物をもって「人は幸せになるために 生まれてきたのです」という物語に一所懸命しようとする。そこで 従軍慰安婦と日本兵の対抗駅伝という物語を作りあげた。でもやはり つかこうへいもすっきり整理できていない読後感が残る。


4月

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「赤瀬川原平の名画読本」
赤瀬川原平・尾辻克彦はさまざまな顔を持つが、最初の顔は現代芸術家だ。 名古屋に赤瀬川原平展を見に行ったときに、美大生時代の絵を見たことがある。 だからマチスやらダヴィンチのいわゆる名画についての基本的な知識を元に、 あの独自の視点でまた一つ別の見方を解説した本。面白い。

「トマソン大図鑑 空の巻」
トマソンとは路上のある種の物件を言う。同じちくま文庫の「超芸術トマソン」に 詳しい。十数年に渡って集められた路上物件についてタイプ別にまとめたもの。 トマソンにとってはその解釈も大事だ。赤瀬川原平の講演会で、 すでに雑誌書籍等で見たことがある物件だったのだが、 氏の解説を聞いたらまた可笑しかったことがある。 これも同じ。懐かしの無用門、無用階段からカステラまで、 横のページを読み飛ばしてはならない。

「リバースエッジ」
懐かしの「リバースエッジ」。90年ごろの都市部の普通の高校生活(帰って ウゴウゴルーガの再放送見るんだ)。 河原の「宝物」がその生活をねじる。 ポップな(って描くのも恥ずかしいけど)絵柄に合った主人公たちの 高校生活と、「宝物」とゲイの少年が誘うねじれた世界の 物語が変にマッチして最後まで没頭して読んでしまった。 なお、摂食障害のモデルの女の子はリアルで見ていられなかった。

「ブルーワールド(2)」
ジュラ期に置きざりにされた人たちの話。1巻は面白かったのだが、 つまらなくなってしまった。この人、恐竜が好きでそれが描きたい だけじゃないかという気がする。

「紺碧の艦隊(1)」
山本五十六がバルチック艦隊に勝った時代からやり直すという パラレルワールドの話。日本がもうちょっといいやつで、しかも 頭を使って戦争に勝っていたら、というそういう覇権主義的な考えがいやだ、などと いう気はまったくなくて、ただ単に物語として面白くない。「ヤマタイカ」という 漫画で幽霊船のように蘇った戦艦大和が、沖縄の米軍基地を攻撃するシーンがあった。 その姿に爽快なものを感じてしまっている自分がいて、そういう隠れた 一面を引き出すようなそういうものを求めているのだ。 ただ単に物語りとして面白くない。

「アンダーグラウンド」
内容も重いが村上春樹がこれを書いたことも感慨深い。 彼が自分のことを(おそらく初めて)「私」と書いた本ではないか。 デバッグの待ち時間に書くには重過ぎるので詳しい感想はのちほど →感想はこちら

「どきどき着物」
着物を紹介する写真というと、髪を上げたモデルさんのものが多い。 この本は、人に着せたものではなく、 着物と帯や草履を着付けたイメージで白い床に置いたのを真上から 撮った写真で紹介している。その表紙が目に付いて買った。 折り紙で作ったみたいで新鮮。文章は着物初心者向けの内容。 しかしこの文章の下手さはひどすぎる。なかなかこういうひどい 文章は最近お目にかかれない。内容も無い。写真だけを眺めるにはいい本。

「BRAINS(2)」
ツーゼ、ブッシュ、アナタソフのコンピュータというより計算機の 初期の「はつめいはっけんのひみつ」みたいな漫画。アナログ微分解析機に こだわったBushが、今からそして未来のパーソナルなコンピュータの 姿をあの時期にMemexとして予想したのがすごいといつも思う。

「MONSTER(5)」
どうして4巻が出てからがこんなに長かったんだろう。が、面白い。ついにあの 冷徹な捜査官と主人公がご対面のところで終わってしまった。スピリッツの 「HAPPY」は100年くらい休載してもかまわないので、 こっちの方を週に二回くらい連載してほしい。

「極秘操作 警察・自衛隊の対オウム事件ファイル」
オウムが世間が騒がせていたころ、週刊誌が面白かった。警察筋の情報、 公安筋の情報、という名目でさまざまな憶測が飛び交っていたからだ。 十年後にもなれば、警察がどこまで掴んでいたのか、オウムが実は何をやって、 何をやってなかったのか、本当のことがわかるだろうと楽しみにしていた。 警察が、亀戸の異臭事件で初めてオウム真理教に4人の捜査員を付けてから 教祖逮捕までを、警察、公安、自衛隊の対策をリアルに書いた本。すごい 面白い。以下、この本に書いてあることがすべて本当で、かつこの本に 書かれていないことはないと仮定しての話。当時公安はずっと前からスパイを 潜入させて捜査していたはずだという噂はうそだった。しかし事が大きくなる ころにはスパイをすでに入れていたらしい。すごいものだ。刑事警察と 公安警察の対立はやはり厳然としてあったこと。自衛隊と警察との連携も 取れていない、強制捜査前日まであかされていなかったこと。話題になって いたラジコンヘリ2つが、最後まで脅威だったこと。もうこれを二年前の 自分に読ませてあげたいくらい面白い話が多い。しかし、天下国家を敵に まわす怖さもひしひしと感じる。自衛隊は軍隊なのでわかりやすい のだけど、しかし警察っていうのは面白い組織である。


3月

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「pink」
岡崎京子は交通事故で重態と聞いてもう一年たつのだろうか。「Quick Japan」か 「噂の真相」で、どうやら命はとりとめたが長期のリハビリ中だそうで 大変な状態のようだ。ホテトル嬢のバイトをする家にワニを飼うOLが主人公。 やはり面白い。こんな才能がある人なので、とにかく命を取り留めたのがなによりで、 とにかくゆっくりでも少しでも回復するのを願うしかない。そして、いつか 岡崎京子の新作が読めるときがくるのを楽しみにしていようではないか(←だれに いっておるのだ)。
しかし漫画をたくさん読んだな今月は。

「尊師麻原は我が弟子にあらず」
帯に「全共闘おじさんオウムを語る」とある。全共闘って聞いたことない団体 なんだが、昔の暴走族かなんかの名前だろうか。なんかこびてる感じが まったくクソくらえって感じだ。 その元暴走族だかのヒネた年寄りたちの公開シンポジウムの内容や、文章を収めた本。 私のまわりにはこういう年寄りがいなくてよかった。こいつらのリアルって いったいなんなのかさっぱりわからん。ちなみに吉本隆明の教祖弁護とか いわれた文章の主旨は、(彼らがやったかもしれない)犯罪は否定するが、 まーたいしたやつなんじゃないの、宗教的な態度としてはこれに対抗できるのは 親鸞ぐらいしかいないぐらいに、ってな感じであった。シンポジウムのほうは、 そこそこにやっていれば十分教祖生活をエンジョイできたのに、 どうしてああいう道に行ってしまったのかを 具体的に考察してみてくれる人がいなかったのが残念だ。 吉本隆明とこのシンポジウムの内容を同じ本にする理由がさっぱりわからんが、 このへんにその全共闘とかいう暴走族だかのいやらしさを感じる。 しかしそう思うと矢沢永吉は偉いな。さすがだ。

「いたいけな瞳(1)」
吉野朔美という人は本の雑誌に面白い漫画を描いているという認識しか なかったむかし、バイト先のマイナー漫画にくわしいちょっとオタクな えぐちくんがこの本を貸してくれた。 まっとうな少女漫画家と知る。古本屋で100円だったので買ってみた。 ちょっと難解なのだけど、セリフがしっかりしているのがいいかも。 でも詩みたいのが書いてあるページが苦手なのだった。

「おしごと」
「Hanako」に連載されてた、 OLと会社生活の日常をしりあがり寿流のおバカさで描いた漫画。 しりあがり寿の会社生活漫画は荒唐無稽さはあるんだけど、 なぞのリアリティがあるのは、やはりキリンビール宣伝部で 長い間サラリーマン生活を送っていたのが大きいと思う。 スピリッツに連載されてる柴門ふみの「お仕事です」が、 世の中で働いてる女性に喧嘩売っているとしか思えないような、 ひどい内容なのと対照的。

「インターネットはからっぽの洞窟」
特に目新しいことは書いてない。 80%ほど同感、とおともだちの わしきたくん は言ったが、ほぼ同感。 「インターネットってのを見せてくれ」と いきなり尋ねてきた私の父(昭和9年生まれの 銀行のキャッシュディスペンサーの前までいって 挫折した←こういうのが本当のCOOLだと思うのだけど)みたいな 人が読むといいでしょう。 ここを見ているようなすでに接続したことがある人はみんな実感している ようなことばかり書いてある。 「カッコウ〜」みたいな冗談も少なくて残念であった。 はやいところインターネットバブルは終わってほしい (便利なところを私が独占したいので)。

「防衛漫玉日記(2)」
傑作。これだけ笑える漫画はなかなか無い。桜玉吉という人は 「ファミコン通信」という雑誌で アニメーション系というか原色系の「しあわせのかたち」という 漫画を書いていたときはまったく興味が なかったのだが、またしばらくたってみたら、それがやたら面白い日記漫画を になっていた。だから「しあわせのかたち」は4巻と5巻だけすきだった。 その日常漫画の続きみたいなやつ。うまく説明できないってのがもしかしたら 笑える漫画の条件なのかもしれない。

「せっかちピンちゃん」
「パチンポ」ほかギャンブル漫画。この人の描く学生漫画がなんだか好きだ。 リアリティを感じるからなんだけど、どこにリアリティを感じているのかが、 まだ自分でわからない。

「イギリス正体不明」
赤瀬川原平の写真集「正体不明」シリーズの2つ目。東京にいたころこれだけ買えなかったのだが、浜松に来て見つからなかった。最近マイルストーンという本屋でシリーズ三冊並んでいるのを発見する。やはり面白い。トマソンって見える人には見えるんだよな。

「ライカ同盟」
三人の名古屋を撮った写真集。ライカ同盟については尾辻克彦の小説「ライカ同盟」に 詳しい。赤瀬川原平はトマソン的なもの。秋山祐徳太子はプロの写真家ではないが芸術的なもの。高梨豊はプロの写真と、同じ名古屋の風景でも素人の僕でもわかる三者三様の写真になっていて面白い。

「星降る夜のバソコン情話」
「続星降る夜のバソコン情話 On The Move」
計算機関連の本なのかなーこれ。「電脳騒乱節」のときより初心者 向けに書かれていて残念だった。ときどき、ヘーと思う文章が あって面白い。たとえそれが米国のコンピュータ雑誌にこういう 記事があった、というのでも、その情報をスキャンしつづけるのは 大変なのは実感しているので余計にそう思う。しかし半年前の文章が こんなに古く感じてしまうのはなんなんだ。
「センチメンタルな旅 冬の旅」
アラーキーの愛妻との旅、そして死への旅をまとめた写真集。 すごいですこれ。「愛しい人を愛しく撮るだけ」と言うアラーキーの 言葉が納得できる。 こういう学生のころ読みたいけど買えなかった本も ぽつぽつと買っているのであった。

「カート・コバーントリビュート」
カート・コバーンの遺書(例のNeil Youngの "Hey Hey, My, My" が引用 してあった("It's better to burn out than to fade away")遺書)を読む 妻コートニーのメッセージが辛い。

「ファイナルファンタジーVII解体真書」
名前通りなんでも書いてある。これが1200円なんだからすごい。 あーあれはそうだったのかー、などともう一度やりたくなるので こういうものを出すのはやめていただきたい。

「月光の囁き(6)」
最終巻を見つける。それなりの事件が起こるのだけど、 2-4巻あたりの凄さを超えられないので、なーんだという感じで終わってしまった。 女の子や友達はギャグのときとかわらないが、主人公の冷たい目が喜国雅彦 新境地って感じでよかったです。

「フラグメンツI」
閉鎖的な街に借金のかたに町長のメイドとしてやってきた女の子の話と、 マゾな人の話の2つの漫画。前者はまあふつうの山本直樹漫画だったが(でも、 一度では意味がわからなくて、2回目でやっとわかった)。後者の方が、 もういたたたたという感じであった。睾丸の皮に釘を打つのはやめて いただきたい(絵を見ただけでも逃げ出したくなる)。

「アジアン・ジャパニーズ 2」
1と違って最初と最後がハノイなのだが、 全体を占めるのはパリで生きる日本人たちについて語りカメラに収めた本。 パリのオペラ座とフランス領だったベトナムに建てられたそのミニチュアの ようなオペラ座が最初と最後にシンボルのように登場する。関係無いですが、 最近「オペラ座の怪人」のストーリーを初めて知りました。 「アジアを旅する」若者と違って「パリで暮らす」若者の方が、読んでいて 元気が出るのはなぜだろう。最後のほうに出てくる絵を描いている女性が 良かった。ハノイで出会う青年が言う「日本人は欧米崇拝し、アジアを軽視 する」という言葉なんだが、この著者もアジアに出てくる若者も、 彼らのアジアへの親近感と欧米文化への嫌悪感ってのは、 やっぱり欧米崇拝とアジア蔑視の裏返しじゃねーか、同じ穴の ルイジアナママのくせにバーロ。結局「先進国」日本から「そうでない国」の アジアに逃げ出して、あーこいつらのんびりしてていーなー、とか いい気になってるだけじゃねーかバーロバーロ、 あれだな、中学生のころ俺がすんでる田舎町の田んぼの真ん中に立ってる中学校に 視察に来た都市部の教師が、いい環境ですねー、って言ってるのに覚えた 嫌悪感と似てるな。くそくらえと思ったのを覚えてるぜ。杉並だの 武蔵野市の主婦が、週末だけ田舎に来て、私たちの緑を守って、だの 子供たちの未来のために自然を残して、なんて言ってる心のドス黒さと 同じだバーロ。
とはいえ、1と同じく感傷的な文章だけれどもいろいろな若者の姿という のはやはり元気が出てきます。彼らの夢のいくつかでもかなえられると いいですね。とても面白かったです。

「月光の囁き(1)-(5)」
谷崎に影響されたという喜国氏の漫画。 ギャグがまったくなくて驚く。 フェティッシュという感覚はわからないが、 昔からいわれる「うなじがきれい」みたいのが拡大された意識が そうなのかなと思っている。各巻に引用されている文豪の 文章を読むと、人間行き着くところまで行くとこうなるのか、 それとも同性愛者と同じで、ある割合でそういう嗜好の人が あらわれるのかわからないが、テーマとしては古いもの なんだなあ。完結したというので買ったのだけど、6巻が最後らしい。 やはり最初は嫌悪していた女の子の変化が物語の中心で、 そこの心理描写はちょっとキテます。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(101)」
101巻からタイトルロゴや本体のデザイン等が一新された。 今回はステルス爆撃機のところで笑った。

しかし今年に入って軽い本と漫画が多いな。どうしてだろう。

「Sweet Vanilla」
昔ヤングジャンプに載っていたこの人の「19」という漫画が 大嫌いだった。絵はうまいのだけど、内容が無かった。 表紙に惹かれてこの短編集買ったら、あとがき漫画に 本人が「19」は内容が無かったと書いてあったので納得する。 しかし喜んで読んでいた人の立場は?って感じだ。 この絵でスピリッツに載っていた凄い漫画「いとしのアイリーン」 なみのストーリーだったら感動するだろうなあと思う。

「Final Fantasy VII」
面白かった。 不覚にもあるシーンで泣きました。どこかは恥ずかしいので書きません。 笑いたければ笑ってくれたまえ(←だれだよおまえは)。

「カスミ伝(全)」
「カスミ伝S」
うわさに聞いていた漫画が新装されて出ていたので買う。 毎回違うありとあらゆる手法が取り入れられている忍者漫画。 手法というのは、たとえばシーンがすべて水中なので、 登場人物がすべて潜水服を着ていてだれがだれかわからないとか、 とにかく縦に長いコマを並べて、ハシゴを昇って行く様子の回とか、 シールがついていて、それをすべて貼ると完成する回とか、 すごいのばかり。笑えないのもたくさんある。 一番大笑いしたのが、忍術でコタツに閉じ込められる回だ。 ページがすべて赤くて、刀で切っても血飛沫が見えないという(笑)、 おバカで笑いが止まらなかった。 Sの方が同程度のページ数で200円高いのは、この赤いページや シールを再現してあるためなのだが、価格を上げてでもそのまま出した 出版社もえらい。

「ビストロスマップ完全レシピ」
SMAPxSMAPの人気コーナーで作った料理のレシピをまとめたもの。 料理本としても十分よくできているのではないか。 試してみたくなるものも多いが、しかしこれらを こなしてしまったあのみなさんは偉いなー。

「銀河鉄道999総集編」
なぜか再開した銀河鉄道999。機械人間(なつかしい)がいなくなった 地球に住む鉄郎をメーテルが(ああなつかしい)訪ねるところから始まる。 とにかくまた二人の旅は始まるわけだが、こんどは何をしに行くのかわからん。 ところどころ言い訳っぽい設定が気になる。無期限パスポートの(なつかしいねー) 行き先が書き換わってしまったところなど、とても意図していたとは 思えない。「再結成バンドはクソだ([*1]エアロスミスを除く [*2]ストーンズは解散していないのでここには含めない)の法則」 がやはり当てはまるのかなと思ったが、思えば昔の銀河鉄道999も 意味ありげで実はいい加減なストーリーも多かったような気もする。 懐かしく読めるでしょう(でも絵が下手になってないか)。


2月

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「アジアン・ジャパニーズ」
アジアを旅する若者の写真と気持ちをまとめた本。どうしても違和感を 覚えてしまうのが、彼らの多くがアジアを旅している自分にはリアリティを 感じ、日本にいた自分はリアルではない人工的なものを感じていることだ。 くそ。少なくともあんたが感じているという事実がある以上、どちらも リアルじゃねーか、と突っ込みたくなる。旅に出たり海外に出たり自然に 触れたりすることで得られるのは、これまでと違った現実の見方であって、 これまでとは別の現実ではない。などと思いつつ、 感傷的な文章に耐えられれば、ある傾向に偏りがちではあるが いろんな人がいて楽しいなー、と楽しく読んだ。 2も出てたので買いました。

「やがて哀しき外国語」
村上春樹の小説は恥ずかしながら全部読んでいるが、エッセイものは 読んでいないので文庫になったのを機会に買ってみた。米プリンストン 大学での日々の話。小説の主人公がときどき言うんだが、 なにか物事に関して感想を言うときの、 なんつーか物事に大して平行に保とうとする回りくどい文章が たくさんでてそこは楽しかった。が、単行本で買う気にはならない。

「私のいちばん好きな本」
「投稿少年」
文庫本の半分サイズで定価200円の文庫。一年で消える。 いろんな人が好きな本もしくは新人賞受賞時のことについて400字くらい 書いた文章が並んでいるだけ。これに200円出すやつはいない。「波」や 「青春と読書」や「IN POCKET」に劣っていてどうするのだ。 本気だったら、「好きな本」に並んでいるような作品をシリーズに 入れなさい。それよりもあれ、幻冬社が文庫出すって本当なんだろうか。 こっちの方が気になる。

「着物の悦び」
林真理子の和服へはまる日々と、和服の楽しみのわかりやすい文章が 載った本。雑誌で見た林真理子の着物姿がやたら決まっていたのだが、 こんなにはまっていたとわかって納得。面白い。
うちの母親は実家の3つしかない部屋のうち1つを 使って近所の娘さん相手に着物教室をやっていた。 (今は5つに増えた部屋のうち3つを使って主におばさん、おばあちゃん 相手に肩のこらない茶道も教えている)。 真夏以外はだいたい着物で、もうおばあさんになりつつあるのだが、 着こなしていてかっこいい(中学生くらいまではそれが老人っぽい と思っていて嫌だったんだけど(子供ってバカだ))。
そういう親を持つと、門前の小僧のお経と同じで、少なくとも世間一般の 平均的30前後の男にしては少しは着物について知ることになる。帯締めと 帯揚げがなんたるかを知ってるし、半衿が何を指すかも知っているし、 道行と訪問着の違いも知っているし、 着物で階段をスマートに昇る方法も知っている。ということで若い女性が 着物を着ているとどちらかというと人生引退したお爺さん的に、 華やかでいいもんじゃ、などと思ったりする。
という反面ここにも書かれている通り、洋服に力を入れる並みにやはり それなりのセンスを見せるには経験もお金もかかる面がある。 その辺のイメージでなんとなく恐れている女性が読むと、 いい面、悪い面がわかっていいのかと思う。男が読んでももちろん 面白い。

「Quick Japan Vol.11」
雑誌だけど番外として。浜松にはこの雑誌を置いてある書店ないのかと 思ったら発見。山崎春美特集で相変わらずこゆい内容。で、なぜ番外で 書くかというと、大泉実成の 「消えたマンガ家」(
単行本も出た)が 興味深かったからだ。「エースをねらえ」の作者山本鈴美香は現在 神山会という新興宗教の教祖になっているんだが、その団体に潜入取材を する話。ここで大泉実成がもう吠えまくっている。この人、オウムに 体験入信していろいろ書いた記事が面白かった人なんだが、 この神山会の内部で行われているのは、教祖のエネルギー注入だの、 信者にレベルをつけたりだの、聞いたことがあるようなことばかりで、 「おまえらオウム報道見てなかったのかー」と愕然、憤然としてるのだ。 私も読んで驚いた。一応私は、新興宗教が世紀末を前にやりにくく なった結果、ここ5年で流行るのは民族派もしくは右翼思想だ、と予想 しているのだけど、これ読むと、まだまだ新興宗教ってのは儲かるし ハマる人も絶えないという気がしてきた。

「ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行」
「SPA!」で現在も連載中の「珍日本紀行」をまとめたもの。 「旅の極意はクルクルパアにあり」というテーマがもうたまらん好きなんだよべーびー。 この連載は楽しみにしていたので、単行本になったら買おうと思っていたら、 9800円のオールカラー日本語英語の解説付きの特大超豪華本で出たので、 びっくりしてしまった。この著者はどうやら美術書などに書く人らしい。 もちろんずっと買えずにいた。よく行く本屋に二冊あったので、どこかの 好事家が一冊買ったら、売れてしまう前にもう一冊買おうと思っていた。 そして、先日ついに一冊売れているのを発見したので、エイヤッと買った。 日本中のどちらかというと趣味の悪い建物とか神様系とか秘宝館とか、 そういう決して旅行ガイドには載らない、がしかしどう見ても日本的な さまざまな施設が並んでいる。その悪趣味さをこうやって集めると 確かに日本の真実の姿を感じてしまう。

「爆笑問題の日本原論」
「宝島30」も読むところが多くて面白かった雑誌だった。オウム事件あたりは 毎月楽しみにしていた。この「宝島30」の最初の方のページに爆笑問題の 誌上漫才が載っていて、すごい面白かった。それらをまとめたもの。 ダウンタウンの松本人志の鋭さも大好きだが、社会的なギャグは言わない人なので、 そこを爆笑問題の危ないギャグを付け加えれば、 全盛期のビートたけしよりすごいかもしれない。傑作。

「SPEED」
「東京で買えないドラッグなどない」←その通り。「SPA!」の中森文化新聞に ときおり出てくる著者の、取材者として、東京のドラッグの アンダーグラウンド世界に入ったはずが、すっかり各種ドラッグにはまって しまい、そのフラッシュバックの中で記述したドラッグ体験記。最後の方に ドラッグ中毒者としての取材される側になった記事、あとがきは 東京拘置所の中で書かれ、最後のページには裁判所の懲役1年6ヶ月執行猶予4年の 判決文付き。すばらしくおばかでリアル。シャブそのものをやろうとは思わなくても、 身を持ち崩すほどの覚醒体験はどういうものかはなかなか知ることができない。 あるのは本書でもやり玉にあげられている「マリファナ・ハイ」や ティモシー・リアリー(合掌)系の気取った精神主義的なものばかりである。 しかしこの本ではおろかにも覚醒剤にはまった著者の快楽への欲求が そのまま書かれていて(少し電波来ている感じもそのまま)、こりゃー 近づかないほうがいいよな、と思った。 僕の現実認識ではドラッグは(その気にさえなれば)すっかり身近なものになりつつある。 止めるのは今しかないと思う。がそういう危機感はなかなか感じられない。

「新・電子立国(3)世界を変えた実用ソフト」
最初に表計算ソフトを作ったってのはやはり凄いと思う。今の一太郎には 興味は無いが、今はどういう人なのかしらないが、 昔々のあのころにATOKとJX-WORDを作り上げた浮川夫妻は凄い。 ワープロで生き残ってるのは一太郎だけだ ソフトウェアの世界では一人勝ちのデファクトスタンダードにならないと 意味が無いという話。痛惜の念を禁じ得ません。

「花田式噂の収集術」
元「週刊文春」「マルコ・ポーロ」編集長で現「uno!」編集長の花田氏の 文藝春秋社時代や、雑誌作りに関する文章。 「マルコ・ポーロ」は花田氏が編集長になって、リニューアルしてから、 読むところが多くてずっと買っていた。「ガス室はなかった」の最終号は いまだに記念にとってある。今、女性誌という触れ込みの「uno!」も 創刊号から買っていて、読むところが多くて面白い。ところがこの本は、 この人が作る雑誌ほどは面白くない。

「Javaを創った人々」
「ASCII」に載っていた記事をまとめたみたいなの。本にするには内容が浅すぎる。 Guy L. Steele Jr.の記事が読めなかったので買う。僕の修士論文テーマはScheme (Lispの一種)で、並列Schemeも実装したので、Steele氏の名前はやたら見たし、 彼の文章はたくさん読んだ。 しかしインタビューでは彼のLisp人生にはまったく触れられていなかったのが 残念。 僕が修士論文でSchemeを褒め称え、将来性に言及した点はすべてJavaが 引き継いでいる。Schemeについての問題点は、すべてJavaで解決策を 提示している。一年違えば「Javaがあるじゃん」で終わってしまっていて 危うかった。その辺の関わりを読みたかったのだが。 しかし、その昔せっせとBSDのネットワーク回りを書いていた ビル・ジョイなんかがいまだにJavaのネットワーククラスのコードを 書いてるかと思うと参ってしまう。

「さくらの唄」
個人的に青春漫画の傑作と思っている「さくらの唄」が豪華版で出ていた。 単行本は引越しを生き残り、まだ手元にあるくせに念のため買ってしまう。 特に内容に手は加わっていないようだが、 表紙はおそらく書き下ろし(「COMIC CUE Vol.2」の対談で安達哲が言っていた 覚えがある)。上巻の表紙がすばらしい。

「森へ」
谷口ジローの初期のストイックな漫画。アメリカ大陸でさまよう元侍がインディアンと 共に騎兵隊と戦う話がいい。

「ライカの帰還」
カメラマンの漫画。太平洋戦争で空母が撃沈され、海にライカとともに投げ出された兵士が、戦後新聞社のカメラマンとなり、さまざまな撮影に関わる話。及第点。 沈みゆく空母の横を飛ぶ米軍戦闘機のパイロットの敬礼する姿、空母から飛び降りる 兵士の絵が妙に印象に残る。

「いっしょぐらし!」
偉大なるしりあがり寿氏は、つい最近までキリンビールの宣伝関係に関わる サラリーマンであった。そのサラリーマン生活を支えたであろう西家ヒバリ氏 (同じく漫画家)の家庭生活漫画&対談。あのしりあがり氏も日常生活はふつう なのだと思い知る。どこに行ってもこたつで二人でいっしょにいそうだ、という この二人は派手さはなくても一番なんだろう。

「スタパミン」
雑誌で読むと面白いと思うスタパ斎藤というこの人の文章も、本として読むと まったく面白くなかった。なぜだろう。細かいギャグをうっとうしく感じてしまった。


1月

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「アンジュール ある犬の物語」
マジロー君というお友達のアパートに泊めてもらったとき 見せてもらった絵本。 感動のあまり、すぐに自分でも買う。 鉛筆で描かれたその場のスケッチみたいなシンプルな絵。でも動きもあって表情豊かで すばらしい。言葉は一つもないが、捨てられた犬に思い切り感情移入してしまう すごい絵本。感動した。

「もっとおもしろくても理科」
西原理恵子が相変わらず因縁付けまくりの挿し絵。これ目当てで買う。 文章の方はのったりしていて面白くない。 「わかりやすい」という肩書きの理科紹介本がいつもつまらないのは、 レベルを落とせばわかってもらえるという安易な書き方のものが多いからだ。 立花隆のすごいのは最先端の研究者レベルの内容をレベルを落とさず「わかりやすく」 解説しているからではないか、と思う。

「はれた日は学校をやすんで」
昨年古本屋に売ってしまった本をまた買った。背表紙を見たら急に欲しくなったのだ。 雑誌uno!を読んでいたら、りえぞう先生はあいかわらずアナーキーにアマゾンで 子ワニで野球をしている。が、その昔の高知土佐女子校の 強制退学事件というのがあって、僕も学生のころその事件を知っていたのだが、 なんかの本でそのとき退学された人として驚いた。そんなりえぞう先生の学校もの。 学校行きたくない感じのリアルさが共感を持つ。uno!の群ようことの対談で「私は 本当はハナ垂らした頭悪いガキと仕事しない酔っ払い亭主と共に 暮らしているはずだった。そしてそうなっていれば幸せだったのかもしれない」 みたいなことを言っていて、感動した。 そのしあわせ感が「ぼくんち」の どう考えても不幸なんだけど、あの不思議な幸福感に 現れているのかもしれない。同じスピリッツに柴門ふみの「お仕事です」が載っている のが不思議だ。 本題に戻ると、自分も学校がずっといやでいやで仕方なかったのを思い出した。 自分も高校中退者なので、あとがき漫画の「高校三年生で習うこと」は 同じことを言われるのですげーおかしかった。

「るきさん」,「増補ハナコ月記」
雑誌「Hanako」で連載されていたやつ。単行本で読んでいたのだが古本屋に 売ってしまった。文庫化されたのでまた買う。「ハナコ月記」は単行本には 含まれていなかった回も含まれている。バブル華やかしころの、るきさんのおよそ Hanako読者からかけ離れたでも安穏とした生活も、ハナコ月記のHanako読者の メンタリティにかなり近く、でもやっぱり安穏とした生活も、 対照的でありながらどちらも楽しそうなのは、要は気の持ち方なのだ ということがよくわかる。

「問題外論(10)」
いしいひさいちの漫画で面白い人材は良かれ悪かれ大物だ。 つまり鳩山兄弟は小物なんだろう。ナベツネや最後に一回しか出てこない松本被告の パワーと比べたら。

「本棚が見たい! 2」
その1が売れて調子に乗って出した 第2巻。まえがきやあとがきはうれしくてたまらんインタビュアの顔が 見えてきそうだが、相変わらずつまらない。インタビュア最低。 國弘正雄の言葉「ぼくにとっての読書とは無償の行為というか、そこから何も求めない。 これだけ本を読んだから、これだけ良いことがあるとか、そういうことには まったく関心ないです。」ブンブンとうなずく。が、そのあとにこう続く。 「ですからこういう本の読み方は、現実逃避ではないかと思っています」 参りました。そのとおりかもしれない。

「人格改造マニュアル」
枡野浩一の短歌で「君の死は完全自殺マニュアルの52ページのような死に方だ」 というのが印象に残ってる。その「完全自殺マニュアル」の著者の最新本。 「デカイ一発」は来ないのだ、で 始まった完全自殺マニュアル刊行後、阪神淡路大震災とオウム真理教という 凄いことが起こった(デカイ一発〜、はしりあがり寿の「夜明ケ」という 漫画のあとがきからの引用、この漫画は引越しを生き残った傑作。「愛して いるなら化石を見せて、化石を好きなら芋虫ふんで」というへんな短編が とても好きなのだ)。それが関係あるのかないのか、今度は人格を変える 方法(つまり生き残る方法)の過激なマニュアル。その手法として、覚醒剤、抗鬱剤、 抗不安薬、アルコール、洗脳、自己啓発セミナー、サイコセラピーなど の効果と方法が著者が実際に調べ試した例とともに具体的に紹介される。 "健全な"精神と肉体を持つ(もしくは 誰もが持てる)と考えるみなさんにはまた攻撃対象になりそうだが、 たぶんまた噛み合わないんだろう。 著者の実体験から導きだされたこの姿勢は、 ただ不健全と考える程度の抗議のレベルとはぜんぜん違うのだ。 実際に試した洗脳セミナーの内容が、文脈を変えただけで宗教にも、 組織の掌握にも通じるところがあって面白い。 勉強になる(このマニュアルを読んで人格を変えようとしているという意味ではない)。

「天皇ごっこ」
著者はSPA!連載の鈴木邦男の連載で書かれていた右翼内の殺人事件の実行犯。 この人もすごい。高校時代に新左翼活動、のちに右翼に転向。内ゲバ殺人で、 刑務所に十七年。その服役中に書いた小説が大幅加筆してついに出たという ことで探していたのだが、やっと見つけた。天皇に関する複数の物語から なるが、刑務所の中のこと、新左翼運動、 民族派としての活動、殺人、そしてよど号犯と会うために北朝鮮に向かったこと、 日本の右翼のテロ史など内容がかなり過激。民族派の人の天皇と天皇制に 関する考えの一端が理解できる。

「Char 竹中尚人」
デビュー20周年のギターマガジンのムック。前半がインタビューやinstrument解説など。 後半はスコア。小学四年生でギターを手にし、高校一年でプロの仕事。教則本で クラプトンの完全コピーを演奏したという。すげー。高校生のころからスタジオや プロバンドでやっていたという根っからのギタリスト。今でもかっちょいい。 ああいう風に自由にギターが弾けたらかっこいいだろうな。

「ポルノグラフィアあるいは廊下の隅の永遠」
矢作俊彦のあの文体で書いた題名通りの小説集。間に横木安良夫のヌード写真が 数葉。あの英語を日本語に訳したみたいな、鋭い切れ味の文体は、 はまると好きなのだが、この小説群の場合、いったいどっちが上で、 手や足がどこにあってどういう姿勢をとっているのかさっぱり わからなくなってしまうことが何回も。読解力が不足しているのだ。

「滅びし獣たちの海」
短編漫画集。どれも平均点以上に面白いが、幕末日本に流れ着いた外国人を、 隠れキリシタンと「白鯨」のエイハブ船長に擬したのがいい。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所デジタル」
両さんの蘊蓄の回のうち、デジタルテクノロジーに関するものを集めたムック。 老人ソフトハウスの話が好き。どの物語もデジタルの面白さへの理解と、 不信が同居していて面白い。が、ただのツールにすぎないという両さんの 基本スタンスは共感を持つ。ちなみに、ここに載っているような わかりやすい例えによる解説を求める人には小田嶋隆の用語辞典が一番。


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