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Book Guide for Rusties 1996

No.
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A: 殿堂入り 5: 読め, 4: まあ面白い, 3: お好きに, 2: つまらん, 1: 金の無駄

12月

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「レキシントンの幽霊」 短編集。村上春樹でしか書けない短編が多くて面白かった。しいていえば、 最初の二つが苦手。
「ラブ&ポップ」 最後まで読んでうなってしまうくらい感動してしまった。"援助交際"をテーマに した小説ということで、まーた流行ものに手を出しちゃってー、と読み進めた のだが、実はディスコミュニケーションがテーマだったのだ。もーいいってと 思うほど挿入される固有名詞や街の喧騒の言葉の数々も古くせー手法だなーと 思っていた。援助交際で得たお金の分配をめぐる "友人"とのやりとりのちぐはぐさも、リアリティないなーと思っていた。 しかし、これらは重要な伏線だったのだ。だから、 ラストで裕美(主人公)が、"終わりなき日常"の脱出口をかいま見る瞬間が 描かれたとき、僕はうなってしまった。参った。
「夕刻のコペルニクス」 右翼団体(本人は右翼をやめたといってる)一水会代表のSPA!での連載が ついに単行本になった。 ちなみに「憂国」の変換ミスではない。 連載は進み方がのんびりしていたが(へたすると半分が 前回のまとめと次回の予告みたいなに感じることもあった)、まとめて 読むと面白い。内ゲバ殺人のあたりやっぱすごい。赤報隊についての話、 連載時ははやく肝心なことを書いてくれー、と毎回楽しみにしていたが、 この単行本でも中断してしまっていて残念(連載をきっかけに、警察の捜査が 入り、それに怒って途中でやめてしまったのだ)。後半は、一水会の幹部が 北朝鮮でよど号ハイジャック犯と会う話など。著者の日常と、過去の話が 多くて、肝心の民族派思想にはあまり触れられていない。
「猿岩石裏日記」 猿岩石の三冊め。同行してビデオカメラを回していた各担当ディレクターとの 対談で旅を振り返る。巻頭にはプロデューサの飛行機疑惑に関する文章も 乗っている。これは事実だったらしいが、「うそだ」と騒ぎ立てるほど視聴者は 怒っていないのではないかと思う。火星人襲来でパニックになった時代と違い、 猿岩石の旅を見ていて楽しんでいた人間は、大なり小なりの演出を感じていた はずだ。何しろ少なくともカメラを回している人間がいることは誰でも わかるからだ。多くの視聴者はTVの虚構を理解できた上で楽しむレベルまではとっくに きていると思っている。だいたいNHKスペシャルではなくて、あの電波少年なのだ。 で、僕が彼らの旅を楽しんだ理由は、この旅を彼らが望んでいなかった、 ということにつきる。 アジア放浪の旅やトラブルはバックパッカーの間ではたぶん珍しいことでは ないだろう。「東京」での「サラリーマン生活」や「競争社会」に「疲れ」、 「自分の本当の姿」を求めるため「アジアを放浪し」、帰国後「人ごみ」や 「足早に歩く人々」や「コンクリートの道路」や「工業製品」に違和感を 覚えたりしてる人はまあ深夜特急にでも乗って勝手にやっていてほしい。 僕もそういうのをやりたいと思うときがある。でも、そんな凡百の旅行人と違って、 猿岩石は旅になんか出たくなかったのだ。そしてそんな彼らが、 だんだん変わっていく様子が本当に面白かった。
「COMIC CUE Vol.3」 江口寿史編集の年一回出る漫画雑誌。今年も現る。 結局面白いと思ったのは、土田世紀(すごい)、安達哲(本宮ひろし系)、 よしもとよしとも(飛ばし気味)、と以前から好きな漫画家ばかりで残念。 そういえば肝心の江口寿史の漫画がなかったけどどうなっておるのだ。
「友がみな〜」 タイトルが最低。自意識過剰の思春期青年じゃないんだから、って感じだ。 中身は帯に"アメリカン・コラム・テイストで綴る、都会の物語"とあるとおり、 ボブ・グリーンみたいな感じで、体裁だけは珍しいと思ったが、 登場する人たちの人生が「で?」って言いたくなる程度。 これは、永沢光雄の「AV女優」や「ぼくんち」西原理恵子で描かれている人生が 凄すぎたのが尾を引いているのかもしれない。でもこの本で書かれている人生の 方がたいしたことないくせに、読んでいて暗くなるのはなぜだ。
「新・電子立国(2)」 家電と自動車のソフトウェアの話。放映では この炊飯器の回は面白かった。が、研究員たちが データをノートに書いて、プログラマがそれらをまとめた紙のレポートを 片手に見ながらアセンブラを組んでいるのが、非常に印象的だったのだが、 誰もそういうことに気づかないんだろうか。炊き具合の研究も、まったく システマチックではないことに驚く。天下の松下なんだから、 ちょっと真剣にやれば、研究に必要な米の量は少なくとも半分には なると思うのだが。その点、自動車の方が技術者っぽい話で楽しい。
「アダルトというお仕事」 AVらしきものが出てだいたい15年だそうで、その創成期から関わっていた 著者が振り返った文章と写真。虚構だったその物語が、普及にともない 実社会で現実化していき、さらに幻想が加速していく。現実社会に 与えた影響はきっと大きいんだろう。が、ビデオデッキというものを 持たなかった自分はAVを見る機会がなかった(高校生のころまだAVという 言葉がなかったころ「裏」を見せてもらったな)ので、 出てくる人名やタイトルがわからない。ロックを聞いたことがないのに、 ロック史50年を読んでるような感じだった。
「タウリン1000mgへの道」 TVCMや広告に出現するわけのわからない言葉のなぞに迫る(タウリン1000mg配合と いわれると、たしかに効きそうと思わせるが、でタウリンってなんだろう? という ことを追求する)本。実は似たようなアイデアを自分が密かに暖めていたので、 (というほど大袈裟ではなく、 そういう言葉(トラネキサム酸とかイブプロフェン鎮痛薬とか)を 集めたら面白いなあと思っていただけ) タイトルと帯を見て、やられた、と思って買った。がしかし読んでみると 内容も解説も文章も安易でがっかりする。新明解国語辞典を文学まで高めた 赤瀬川原平を見習ってほしい。 「インパクトの瞬間ヘッドは回転する」や「バールのようなもの」の 清水義範もアイデアはよかったが、それ以降の完成度が甘かったのを思い出す。
「TRUE COLORS」 で、さそうあきらの漫画をどうして読んでしまうかというと(↓↓からの続き) 一見わたせせいぞう系の都会はこぎれい漫画かと思わせるがそうならないのは、 毒があるところ。
「宗像教授伝奇考(2)」 民話から人類伝播の起源にせまる民族学の宗像先生主人公の漫画。 伝説が現代に蘇り、事件が起こるというパターンはちょっと飽きてきた。 この宗像教授の推論がもっともらしくおもえるけど、MMRキバヤシ入ってます。
さそうあきら「拳骨」 で、この人はこぎれいっぽい絵だが(↓からの続き)、 絵の印象と描かれた内容の業の深さが これだけイメージ離れている人も珍しいかも。 いじめとその復讐
土田世紀「鯱」 この人の描く顔が本当にいい。が、泥臭くてだめな人も多いらしいが、 体中の汗もプラスチックでできていそうなこぎれいなのがぼかー好きになれん。 人殺して同僚の女性と逃げる表題作が短編映画みたいでいい。
さそうあきら「虫^2タマガワ(1)」 さそうあきらで初めて面白くないと思った貴重な一品。
「ブレインズ(1)」 計算を自動で行おうとしたディファレンス・エンジンとのバベッジ、 詩人バイロンの娘で人類史上初めてのプログラマのエイダ、 計算可能性とチューリングマシン、チューリングテストのチューリング、 といったコンピュータの開祖の伝記漫画。もちろん知ってる内容ばかり だったが、計算機ってのは便利だがなんだか気に食わないと思っている人には、 コンピュータも人間臭い他の人類の発明品と同じとわかるはず。 チューリングが同性愛者だったので逮捕された事実まで書かれているのは、 連載していたのがビジネスジャンプだったからか。
「オウム真理教裁判傍聴記(1)」 すっかり世間では忘れ去られているが、オウム裁判はすごいことになっていて 面白くてたまらん。教祖は吉本隆明が期待していたような陳述はまったく してくれず、相変わらず意表を突く行動で大活躍。反省するもの、しないもの。 供述がひっくり返るもの。あいかわらず井上嘉浩被告はすごいし、教団のナンバー2と 無責任に書かれていた人はまったくの無罪だし(ナンバー2は何人いてもいいの 法則、とか懐かしいな)、教団の加速ぶりもどんどん明らかになっている。 裁判官や弁護士、検察も大はりきりだ。ということで、週刊文春の連載も 読んでいるのだけど、単行本も買ってしまった。
よしもとよしとも「青い車」 マイルストーンという本屋でついに発見。すばらしくて泣く。 青い車、ツイステッド。この手の内容や手法は最近は珍しくないのに、 どうしてよしもとよしともだけは共振するのか自分でもわからん。 昨年引越しの際に売ってしまったことを悔やんでいる作家の一人。
「制服通りの午後」 ここ数年の制服(当然女子高生のみ)の事情について考現学的にまとめたもの。 あっちの趣味の人向けではない。 DCブランドの制服ブームや、その後ブランド制服を取りやめる学校が 出てきた話や、私が吉祥寺近辺をふらついている 間にあれよあれよと短くなっていったスカートと、あれよあれよと だぶついてきたソックスの現象の記述面白い。 なんにしろ、あのたいしたデザインとは思えないマジソンバッグや、 カバンの機能を果せないくらい薄く潰した学生カバンをかっこいいと思っていた、 あほな学生時代をを覚えている私には、ついに復活してしまった レッグウォーマを笑うことはできないのだった。 読んでるうちに途中で飽きてきたのは、話が学校名など細部に渡ってくると よくわからないからだ。隣の星の国の話をされてるみたいで。
「100万回生きたねこ」 感動した本に挙げる人が多い本。がしかし、ただただ考え込んでしまうだけであった。 でも死ねてよかったね。
「羊男のクリスマス」 ほかの短編の方がよっぽど絵本みたいだ。駄作と言えよう。
「本屋でぼくの本を見た」 作家の作家になったときの話。全体的につまらないが、赤瀬川原平と森雅裕も 書いていたので買った。
「お仕事いろいろ」 電気グルーブのピエール瀧と石野卓球は同じ歳で、静岡市出身。 高校生のころ、静岡の「人生」というへんなバンドをやっていた。 おばかさが昔やっていたモグラネグラのおばかさが出ていて 楽しい。けどだれが買うんだろうこういう本(おれか)
「東京サイテー生活」 東京で家賃2万年以下の生活を送る人々のインタビュー。 ぜんぜんサイテーじゃないふつうの生活。 でも皆も私もそういう暮らしはしないのだ。 ちなみに自分は2万(6畳トイレ付き) →2.5万(4畳半トイレ風呂なし)→出家→3万(6畳トイレ風呂無し) →脱走→6万(6畳トイレ風呂付き)→5万(6畳7.5畳キッチン風呂トイレ駐車場付) とバージョンアップしている。最後が現在の浜松で一番コストパフォーマンスが いい。
「猿岩石日記(2)」 第一巻ほどの面白さはない。慣れてきて凡百のバックパッカーみたいに なったせいか。
「とりのいち」 いつもそうなのだが、とり・みきの漫画は 大笑いできないがつまらなくもないという、難しいあたりにある。 今回も同じ。「山の音」だけは衝撃を受けたが。
「こち亀 読者が選ぶ傑作選」 年に数回ある心暖まる系のストーリーが多く選ばれているのに驚く。 もしかして少年たちは友情・正義・勝利よりも人情・仁義・感動を 求めているのではないか、少年ジャンプはアンケートで調べてほしい。


11月

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江國香織「落下する夕方」 帯に、あとがきから抜粋されたこういう文章が書いてあった。
「これはすれちがう魂の物語です。すれちがう魂の、その一瞬の物語。 そうしてまた、これは格好わるい心の物語であります。 格好わるい心というのはたとえば未練や執着や惰性、そういうものにみちた愛情。」
突然付き合っていた相手から別れると言われた女性が主人公。 しかも相手の新しい女性が、自分の部屋にやってきて、それ以来女性二人の 生活が始まる。上の文章のように、困惑し嫉妬する主人公の格好わるい様子、 また、主人公の元の相手の格好わるい様子、それがべったりではなく さらりと書かれているんだが、よけい印象的。みっともない男だ、と 思いながら読むが、リアリティありすぎで嫌な共感もある。 2人をかき回す女性が一番魅力的だが、あくまでも小説の中の話。 実際いたら2人のように寛大ではいられないと思う。結末も印象的。 格好いい部分だけだったら誰でもうまくいくが、格好わるい部分もいっぱいある、 たいていみっともなく悲しい。それをどうできるかが大事 (が、もちろん格好悪いのが一番いいわけではない)。
なんていう小説の内容は実は自分にはたいしたことはない。 引用した帯の文章の最後にこうある。
「つきすすんでいく格好わるい心の上空に、しずかな夕方がひろがりますように」
江國香織はすごい。実はこの帯の一文だけでこの本を買った。 そういうこともあるのであった。
「職人」 永六輔嫌いだが、面白い。職人には昔から憧れる。名前が表に出る作家ではなく。 ただ、伝統的な物を妙にありがたがるのは好きではない。対極にある無機の 分野でも職人がゴロゴロしているのは「メタルカラーの時代」を読むとよく わかる。コンピュータプログラムの世界にも職人も作家も量産人もいる。 だからよくわからないハイテク否定には抵抗がある。蟻塚も原発も同じ 穴のルイジアナママなのに。"Don't trust technology, but use it" とWIREDかに書いてあったが、この辺のスタンスがいいのかなと思う。
「突破者」 「グリコ・森永事件の真相」で、M氏と書かれている 有力容疑者だった宮崎氏の半生。半端じゃない不良少年とヤクザ、大学闘争での 民青活動家、週刊誌での経済記者、解体屋、そして詐欺まがいや脅しと 資金繰りに奔走する土建屋、倒産後の資金繰り、バブルのころの用心棒と、 凄い半生の述懐が続く。この人頭がいいし面白いので、 やっぱこの人グリコ事件の首謀者じゃねーの、 と思ってしまった。犯人像そのままなのだ。なかなかそういう大物はいない。
「奪取」 偽札作りの話。偽札作りは知能犯の仕事。貨幣の偽造は国家の根本を 揺るがすものなので、とくに紙幣は精巧な印刷技術の粋を集めて作られて いる。そんな紙幣偽造に挑んでゆく物語。面白い。 でも、そんな知能犯を描いているものだから、 半分以上は製紙から印刷技術の話になってしまう。 途中少しだれた。結末がナニだったが、紙幣製造の技術については かなり詳しくなれるかもしれない。凸版凹版オフセット版の違いを 初めてしった僕でも面白かった。
「不夜城」 二年前くらいか、新宿で中国人だか台湾人マフィアの争いで、青龍刀で の殺人事件が起こったことがある。今はなき雑誌「マルコポーロ」だったか ヤクザも恐れている新宿の外国人のアンダーグラウンドな世界の記事の 現実に驚いた覚えがある。台湾と日本のハーフのハードボイルドな主人公の そんな世界の話。いっきに読み進めるが、評判のような傑作という 感想はない。たぶん触覚の場所が違うのだと思う。著者は 本の雑誌で書評をしている世界一かわいい猫マージを飼う坂東齢人らしい。 坂東齢人は触覚が合うので、他の北上次郎あたりの本の紹介より 好みがあって好きだ。だから自分としては彼には作家にならずに、 本の紹介人の方を続けてほしい。
「ぼくんち(1)」 スピリッツ連載中。絵本のような装丁だが、貧乏な少年二人のハードな 日々の漫画。結婚したらしいりえぞう先生がなぜそこかしこで 怒りまくっているのかわかるような気がするしゃーわせの書き方が すばらしい。
「ぼくは勉強ができない」 秀美君かしこすぎる。醒めた目で学校生活を見るとけっこうバカらしくて、 そんなのが必ずクラスに一人はいたが、ここまでは賢くなかったように 思う。それに加えてモテるのだから。主人公の立場で読むので、賢さが 素直さに表現されるので、面白いのだと思う。醒めてるんだが、冷たい わけではない。面白い。
「見学ノススメ」 気象庁、東京株式市場からノーパンシャブシャブまで見学しまくったエッセイ。 基本は二つ「カッチョイイ」と「カッチョワルイ」という原田宗典の パターン。 一つの量が少ないのか、あー行ったのね、で終わってしまうのが多い。 が、同じ週刊誌連載のスペースでも西原りえぞう先生があれだけ つっこみまくれるのだから、「作家」としてはもっとがんばつてほしい。
「放課後の音符」 解説を書いている氷室冴子の世界と対極にある凛とした女子高生の 世界。十代の自分のまわりにいたらすっかり戸惑ってしまったであろう かっこいい娘さんばかり。女の子が読んだらもっと面白いのだろうと思う。
「東京路上人物図鑑」 「東京女子高制服図鑑」の著者による、路上のちょっと変わった人々の 図鑑。制服関係はその後多くのエピゴーネンを生んだが、それらは たいていフェチ系であった。この著者は赤瀬川原平と同じ考現学系の 人であるから、東京の路上のちょっと不思議な人にも鋭い視線が飛ぶ。 子どもも若者ファッションもおじさんも、ちょっと筋が違ってしまった 感じがとても面白い。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所(100)」 ついに100巻。うしろの折り返しがウケる。シリアルNo.付で283841だった。 この漫画が始まったのはよく覚えている。 「ドーベルマン刑事」とか「サーキットの狼」全盛のころで、 小学三年生くらいだった。 従姉妹の子どもの小中学生も、夢中になって読んでいるのを知り、 現在も人気が衰えていないことに驚いた。
「新・電子立国(1)」 TVシリーズで語られなかったエピソードも含めた単行本。6巻まで毎月刊行 予定らしい。ソフトウェアの世界やその逸話については身近だったため、 「電子立国日本の自叙伝」ほどの新鮮な驚きはなかった。単行本では TVシリーズの取材の裏や、より詳しい内容について再構成して 語られている。やはり、創立間もないマイクロソフト社のおばさんと、西氏の 一呼吸置いた「かわいそうにねー」が秀逸。


10月

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「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」 やっと一冊見つけた。こんなに売れている本を平積みではなく、 棚に一冊だけしか置かない谷島屋書店三方原店はなんとかしてほしい。 吉祥寺が懐かしい。グリコ・森永事件の表に出なかった 事実や、容疑がかけられた人たちについて書かれた本。 読み物としてとても面白い。 怪人二十一面相は結局捕まらなかった。そのことを警察は 恥じているようだが、この本を読むと警察の捜査は本当に凄い。 ほとんどの遺留品について買った場所がてわかっていたりとか (だからこそ捕まえられなかったのが謎なのだが) 悪いことはやらん方がいいなーと思う。
「自殺直前日記」 ヤンマガを読んでいたころ山田花子の漫画を見て驚いた覚えがある。 ヤンキー系とは対局にあるいじめっ子漫画だったのだ。しかも 醒めた視線が怖かった。その山田花子の自殺に至るまでの日記。 分裂病の症状が出てるあたりは見てられないが、ときに冷静で冷酷な一文が あって、才能があったのになあと思ったりもした。
「立花隆のすべて」 ぼかー立花隆は「門外漢の専門家」と勝手に名づけ愛読している。 この本であらためて全分野をざっと眺めてみると本当に凄い(最後の若き日の 恋愛小説は少し笑ってしまったが)。ちなみに立花隆で一番お薦めは 「サル学の現在」で、サル好きがまた深まった。次が「精神と物質」で ノーベル賞への研究を追体験したような気になった(が内容はすぐに忘れた)。
「猿岩石日記(1)」 面白い。TVでは放映されなかった内容なども わかる。それでもある程度の演出はあるだろうが、先日ロンドンに着いた その場で日本と南米のチケットを選択する場面で、有無を言わさず日本の チケットをとったところが、とてもリアリティがあった。日記書く 余裕はあったとは思えないのだが、面白いから許す。
「ビタミンCブルース」 「推理小説常習犯」を読んで森雅裕の単行本の 多くが売り切れ状態になっていることを知って、古本屋で見かけたら 買うことにきめた。これがその第一弾。また、今年初めに古本屋に 売ってしまったいくつかはやはりまた手元にほしくなったりしている。 だから、自分がいいなと思った本は見つけたら買って、二度と手放さないように しようと心に誓うのであった。のだが、この本はちょっと面白く なかったのを読み直してから思い出すあたりがダサいといえよう。
山下マヌー 見栄講座風の海外旅行マニュアル。帯が表紙の2/3を隠しているのに 興味を持って買う。海外に行く人を見るとうらやましーなーと 思っていたが、そういう人たちはこういうささやかな「情報」で 他人と差別化しようとしていると思うと私はなぜか幸せな 気持ちになるのであった。
「プログラマの憂鬱」 古本屋で安かったので買う。つまらない。この本を買ったときは、自分が そういう人であるということを忘れていたことの方が面白かった。
「人は幸せになるために〜」 つかこうへいなのでタイトルから普通の人が受けるようなイメージの本では ない(そもそもそういうのは私が買わない)。にも関わらずタイトルのような 内容についてはタイトルから普通の人が受けるようなイメージの本よりも ずっと深く書かれている。「娘に語る祖国」の続き的な作品で、タイトルのような イメージの意味で泣けるからつかこうへいはいい。
「タマキトヨヒコ君殺人事件」 乾いた明るげな絵だが中崎タツヤ「じみへん」のような趣のある作品。
「教科書が教えない歴史」 通常の教科書の「ごめんなさい史観」に対して 「こういう人もいたのに史観」で書かれたさまざまな人の話。 僕は教科書で教えているはずの歴史も よく知らないので、そういう人間には面白くない。
「超整理日誌」なんだか当たり前のことしか書いてなくて、 経済の話以外はまったくつまらなかった。こういうのを誰かに無理矢理読まされる 人はかわいそうだ。
「消えたマンガ家」 消息を絶った漫画家のインタビューなど。 「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめが面白い。この著者は「宝島30」で オウム体験入信とか面白い記事を書いていた人で、視点がいい。でも、 内容は少し物足りない。
「猫の宇宙」やはり作為があると面白さも半減する。
「フラン県こわい城(1)」思わずちんこクラブに入会したくなる 素敵な漫画。週刊漫画アクションを読んでいたころ、これだけを 楽しみにしていた。イモトネがかっこいい。
「〜両津勘吉成長記」オートバイで川に落ちる回が多分はじめて オチの無い回だったと思う。この回が強烈な印象に残っている。
「東京シックブルース」成長期に分泌されると言われるロッケンロール ホルモンについて熱くさわやかに描いたあの「青春デンデケデケデケ」のその後 みたいな作品。おらー団塊の世代が1970年前後をセンチメンタルに書いた本は でーきらいなので(例外は「69」と「スズキさん〜」くらいか)、これもその手の いやらしさが多くてがっかりした。 主人公がジミヘンを聞きつつ「ロックは変わったのだ」と肯定的にか 否定的にか、感極まるシーンが印象に残る。
「〜脱正義論」薬害エイズ(この言葉は誰が言い出したのだ)問題もやっと 医者も製薬会社も役人もついに捜査のメスが入り(この言い回しも誰が始めたのか) はじめた。うっかり葬り去られようとしていたこの問題をここまで表に出したのは、 決して櫻井良子や管直人ではなく、実名公表した被害者と、それを支えた運動で あるのは確かだが、その運動の行方について憂う内容。ゴー宣はもう飽きた が、あの手の運動の学級委員的生真面目さの危うさについては共感する部分も 一部あった(井上嘉浩被告のあの真摯さ)。


9月

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「ジャズ小説」ジャズ知らないのでイメージがわかない、と 思って読んでいたら、最後に小説で登場する曲とアーチストの 詳細な解説が載っていた。筒井康隆は早く復活してほしい。
「騙しのテクニック」つまらなかった。だまされた
「生徒諸君」やっと見つけたが、以前のをストーリーを忘れていたので、 一巻から読み直した。 沖田君が遭難するあたりがピークで、それ以降心象風景が過剰だったり、 妙に説教臭かったりして、後半2巻くらいが退屈だった。が、最初の 気のぬけた転校生漫画がどんどん化けていく様子が面白かった。
「問題外論(9)」オウム関係面白い。に比べて最近の鳩山兄弟のネタが つまらないのは、それだけ小物なのか。週刊文春の漫画も 久しぶりにフセインが出てきたらとたんに面白くなった。
「F 落第生」決してA(優)ではなくF(不可)かもしれない人生を送る、 主に二十代後半以降の女性を描いた短編集。 永沢光雄のAV女優のインタビュー集を読んだあとでなければ、感動したかも しれない。二つしみじみした作品があったが、恥ずかしいので書かない。
「死んでもカメラを離しません」 不肖・宮嶋の最新作。あの 拘置所の松本智津夫被告のスクープ写真の撮影秘話が凄い。韓国民主化運動を 下痢しながら撮影した話や、新人時代の三里塚取材の話などが読める。 自衛隊物と違っていまいち文章が冴えないが、それでも面白い。 9/12発売「週刊文春」には初めて韓国に行った自衛隊のルポが載っていたが、 今はイラクに潜入しようとしているのだろうか。
「推理小説常習犯」 ある程度数が出ている作家の全作品のうち 9割以上を読んでいるのは少ないが、森雅裕はその数少ない中の一人。 名作「歩くと星がこわれる」の後半で主人公が作家デビューするあたり、 どのくらい脚色してあるのかと思ったら、全部本当だったようだ。 出版や編集に関してかなり切れているが、ファンとしては小説以外の 文章を読めるので嬉しい。しかしかなり悪口書いてあるので、 すっかり干されて小説が読めなくなるのが心配だ。オペラを題材に したシリーズ(椿姫、カルメン、蝶々夫人)の続きを読みたい。 巻末の著作リスト、ほとんど絶版で驚く。全著作のうち、 2冊以外はいい作品ばかりなのに。引越しの際「歩くと星が 壊れる」以外は売ってしまったのを悔やんでいる。鮎村シリーズが 絶版とは信じられない。
「新解さんの謎」新明解は第三版から主力国語辞典として 使っている。独自の語義が第四版が出たころから評判だったが、 それを赤瀬川原平的視野で楽しめる。新解さんが自暴自棄になっていく くだり、以前の尋ね人広告のように面白い。
「沖縄の怒り〜」たまたま代理署名拒否の裁判の判決出たころ 読んでいた。ノンフィクションとしての出来はどうかと思うが、 25年前から今までほとんど変わっていないことがわかる。 あのVXガスやマスタードガスとかその手の 昨年飽きるほど聞いたあの兵器が(すでに懐かしい言葉となってしまった、 なんてことだ)沖縄に大量に存在していた事実を知らなかった。


8月

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「お笑い大蔵省」 はお笑いシリーズ最新作。大蔵官僚との対談。 大蔵省の中でも主計局が一番偉いのだそうだ。。 大蔵省分割論も単にパワーを増大させるだけだとか、 住専を見逃しちゃったのは確かに失敗だったが、要は国民がバカだからだとか、 ガリ勉して東大法学部入るような奴では大蔵省主計局は勤まらない、 せいぜい建設省止まり、だとかなかなか新鮮で面白い。
「こち亀」はついに99巻。
「本棚〜」 つまらん。インタビュア最低。ただ阿刀田高の本棚は でかくて笑える。
「ビックリは〜」本当に忘れかけてた あの雑誌ビックリハウスの昔話。 偶然だが、この人のビックリ時代は、神経症からの 脱出でもあったとも知り驚く。今、ワイドショー なんぞでしゃべりまくっている姿からは想像できない。よく言われます。
「ナチュラル・ウーマン」親指Pの方がわかりやすかったのは、 男の自分にはAよりPの方が身近だからか? 昨年映画化されたはずだが、どうやって映画化 したんだろう。
「親子で〜」最先端のさまざまな技術を"やさしく"解説した本。 「文科系でも大丈夫」という帯も付く。 この程度で易しく解説したつもりになってもらっては困る。 西原りえぞうに噛み付いてもらいたい。ときおり付け加えられる行政批判も余計。
「新作文宣言」あのロックな 学習参考書「高校生のための文章読本」などの著者らの作文論。 もう10年前か、この本で藤枝静男の文章を初めて読んだ。 でも、作文嫌いがこれを読む気になるとは思えない。
「現代思想は〜」タイトルほど難しくない。表題の文章、 グサグサくる。少し内容が古いがソビエト崩壊の必然性の話わかりやすい。 出産革命はラジカルすぎてついていけない。
「AV女優」 42人の AV女優へのインタビュー集。こんなに凄い本は久しぶりで感動する。 すさまじい生い立ちの子ばかり。 親兄弟の顔を知らない行方を知らない子ばかり。内田春菊みたいな 生い立ちも珍しくは無い。二十歳そこそことは 思えない人生がこれでもかとばかりに続き、度肝を抜かれる。 今年ノンフィクションベスト1候補。面白いことに、解説の大月隆寛も 週刊文春で絶賛していた立花隆も、 本の雑誌で絶賛していた(たぶん)坂東齢人も、 柳美里も 紹介するときに、彼女たちの言葉を引用する手法を取っていた。 つまり彼ら文章の達人も、引用しなければ凄さを伝えられないほど 、そのくらいこの本の中にある言葉は凄いし、面白いし、悲しい。 とにかく多くの人に読んでもらいたい本。
「防衛漫玉日記(1)」そねみ大活躍。おとなの漫画。


7月

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なぜか仕事忙しくなる。 ハードな一ヶ月であった。棒のように眠りたい。 宮嶋茂樹、今は亡き「マルコポーロ」で読んで、 小田嶋隆以来の感動を受けたのだが、 昨年からずっと探していた前著をやっと見つける。 やはり文章が最高に面白い。 「神経症の時代」森田療法 (神経症の治療方法の一つで浜松医大精神科などが入院患者に 実践している)の話だが、こんなんで開高健賞 取れるの? という感じだ。香山リカの本の三人の神経症患者(鈴木慶一・ 高橋幸宏・大槻ケンヂ)の言葉の方がよほどすばらしい。 ちなみに神経症が 薄皮が一枚一枚はがれるように 治っていくというのはたぶん本当である。


6月

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環境にも慣れてきたようで就寝前の読書を再開する。 北村薫はどうも肌に合わない。「スキップ」はたまたまだったようだ 「あさま山荘」前回の「東大落城」よりは熱気が伝わってくる。 著者はええかっこしいで好きではないが、凄い事件だったんだなあ、と 思う。機動隊員もすごい。「モンスター」 久しぶりに面白い漫画。次が楽しみ。安達哲、これを「少年 マガジン」で読んで興味を持ったのだが、よりシリアスに なったのが、この次に「ヤングマガジン」で連載された「さくらの唄」だ。


5月

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環境の変化にまだ馴染んでいなかったのか、漫画ばかり読んでいた。 「オウムと近代国家」は「なんて恐ろしい犯行でしょう、それでは次は スポーツです」で済まされるはずのない問題について多く語られて いて新鮮。橋爪大三郎やはり面白い。「素人娘〜」AV監督のテレクラと カレー旅行の日記。著者の冷めた視線と、登場する一見熱いが実は とても冷めた女性陣は、表面的な倫理観で排除するだけでは 済まない深さを感じさせる。「ロッキン・ラジヲ」の「デトロイト ロックシティ」のだるまさんがころんだ、すげーおかしい。 しりあがり寿の漫画で二番目に好きな「流星課長」は新作も傑作。 「まあじゃんほうろうき」は処分したばかりなのに、 また買ってしまった。「ケンペーくん」鈴木邦夫の帯に惹かれて 買うが、「不肖」宮嶋茂樹の文章の方が100倍面白い


4月

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一応は新卒としての会社勤め始まる。具体的な苦労はないはずなのだが、 慣れない環境は精神的な疲労がたまる。本も読まなくなる。そもそも本屋に 行く機会が減った。会社が浜松市の郊外にあるのも原因だ。 「オウムからの帰還」著者はまだ帰還を果たしたとは 言えないと思う。井上嘉浩が登場するところ、興味深い。 翻訳ものはまったく読まないが、「本の雑誌」に 連載している青山南の翻訳話はいつも面白い。「英語になった〜」は 英訳された現代日本小説がどう翻訳されているかを紹介した本。 普段、翻訳の難しさに苦労している著者だけにわかりやすい。 と学会はあいかわらず面白い。 植木不等式氏は話をしたことがあるが、すごい面白い人だった。 懐かしい。ト学会の連載があった科学朝日も宝島30も休刊になって しまったというのに、トンデモ本はまだまだ健在だ。 「本はどのように〜」はタイトル負け。中島らも、薬物学者との 対論が面白い。安達哲は久しぶりに新作だと思ったら、以前ヤンマガに 載っていたものだった。


3月

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引越しのため本を売り払うことにする。六畳間にうずたかく積まれた 本は片っ端から束ねながら数えると、 2000冊以上あった。そのうち1200冊を近所の古本屋に引き取って もらう。買い叩かれて泣く。 引越し作業の疲労の中で中島らもばかり読み、そして 8年間の大学生活を終えた。3月31日、赤瀬川原平の講演を聴きに ゆく。サインをもらおうと思ったのだが、そういうチャンスは 無かった。


2月

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2月は修論のラストスパートおよびその後の虚脱期、そして引越しの繁忙期に メモを詳しく取ってなかった。そのため、出版社および著者名が "unknown" と なっているものあり。「ぼくはこんな本を〜」は面白い。立花隆は文学モノは 読まないというが、中学時代の作文を見て驚いた。およそ読むに値する作品は このころでほとんど読んでしまっているのだ。とても真似できない。 「ガダラの豚」は傑作。厚い単行本を一晩で読む。 ちなみに最近(今は1996年7月)三分冊で文庫かされた模様。 兄の本棚の中島らもを漁るが、他には「今宵、すべてのバーで」がすごい。 エッセイのたぐいも翌月まで漁る。


1月

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年末読んだ「スキップ」が面白かったので帰省した際、兄の本棚の他の作品を読む が好みではなかった。「だから〜」は笑える。 「だから大学院生はやめられない」、 「だから大学生はやめられない」、 「だから大学経営はやめられない」、 なども読んでみたい。「生徒諸君!」は小学生のころ 従姉のところで一回読んで、 面白かった記憶があるのだが、中身は、 沖田君というのが遭難するシーンぐらいしか覚えていないので、 ぜひまた読んでみたかったもの。 最近文庫化された。 いきなり「悪たれ団」とか出てきて元気な転校生モノで脱力する。 こんなつまらんのだったかなーと思いつつも読み進めると、 一巻のおわりあたりからシビアになってきて、止まらなくなる。 はやくつづきが読みたい。


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