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Book Guide for Rusties 2004/02

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A: 殿堂入り 5: 読め, 4: まあ面白い, 3: お好きに, 2: つまらん, 1: 金の無駄

2月

斉藤美奈子「男性誌探訪」朝日新聞社
佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく(8)」講談社
あだち充「KATSU!(11)」小学館
小林よしのり「新ゴーマニズム宣言(13)砂塵に舞う大義」小学館
中島らも「せんべろ探偵が行く」文藝春秋
「せんべろ」というのは「千円でベロベロに酔える酒場」のことで、 中島らもとライターとその他がそういうお店を回るという本だ。

つまんねー。

中島らもの本と思ったら大間違い。 中島らもをダシにしたなんの芸もない別のライターの文章がダラダラと 続くだけの、ひどい本だ。

中島らもの会話と短文はさすがの面白さなのだが、もうね。ダルくて。 こういうのを読むと、無名ながら(当時、その後ブレークした)も、 中島らもにひけをとらずに、 逆に中島らもをも上回る個性を見せて、 歴史に残る対談にしたてあげたあの いしいしんじ は 偉大だ。「ダヴィンチ」連載時に読んでいたにも関わらず、 いまだに読み返す「その辺の問題」の偉大さがよくわかる。

今月は愉快な本と不愉快な本の落差が激しい。 とくに中堅勢の現在の地位に甘んじた手抜きが目立った。

枡野浩一・オオキトモユキ「淋しいのはお前だけじゃな」晶文社
ちょっと意識的に趣を変えているっぽい枡野浩一の文章がかなりよいのですが、 文字が大きすぎるので4にした。↓の鉤屋の本は新書サイズとすることで 価格が高めになってしまっているのだが、この1400円の本よりは良心的だと思う。 「すてきなイラストがついて」というのはわかるが、この文字サイズはないだろうと 思った。「枡野浩一のいい感じの文章を読みたい」という人より、 「なんかいい感じでおされっぽい本を持っていたい、そしてそれを持っている私を 見て欲しい」というような読者が多いのだろうか。それは偏見だっ。ハイハイ。

私は、本の価格は気にせず、このページに載っている本は(いない本も) すべて(BOOKOFFなどではなく)通常の書店価格で買っている (月トータルの金額は気にするが)。 そういう私が「えっ、これでいくら?」と価格を見てしまったのだ。 たとえ駄本でもこういうことはめったにない。 という事実を重く受け止めていただきたい。などとここに書いても仕方ない。

「もう買わない」というのが一番わかりやすい読者の立場であるが、 そうするには惜しい著者なので、「多少警戒するようにする」という 曖昧な態度でこの場を濁したい、そう思った。

桜玉吉「ゲイツちゃん」エンターブレイン
3年前入手した自費出版の 「ゲイツちゃん本」 よりちょっと増えた物。これもエンターブレインの期末対策っぽい。 しかしやはりすばらしいので許す。
桜玉吉「読もう!コミックビーム」エンターブレイン
ファミ通に載っていた「コミックビーム」の広告四コマ漫画を集めたもの。 面白い。 売れない漫画誌という自虐ネタなのだが、 (休刊と信じ込んだライターが「噂の真相」のコミック欄に書いてしまった という事件もあった) 今年こそ危ないというネタがここまで続くと(8年100号まで続いた) それ自身がアイデンティティみたいになってしまってわからない 状態になっている。とはいえ、 この時期に発売されるということは、決算に向けて数字を上げる必要があってとの ことだと思い、安穏としてはいられない状態が続いているのだろう。 で、漫画としてはかなり面白い(↓の2人はこれ読んで反省文を提出すること) が、コミックビームって一度しか買ったことがない。ファミ通も 一年以上買っていないんじゃないか。
とり・みき×ゆうきまさみ「土曜ワイド殺人事件」角川書店
久々に腹の底からこんな漫画を買ってしまったことを後悔した。 二人とも私が知っているくらいだから、 有名な漫画家なのだと思うのだが、なんだこれ。
とにかく全編にわたって一度たりともクスリとしなかったギャグマンガ。 最後で対談やっているんだが、そのヤバい状況についての自覚が まったくないようだ。 吉田戦車や中川いさみはえらいと思った。
そね「コキール男爵」鉤屋世界新書
こちらも書き下ろし。食べ物についての本が苦手なので、 あまり面白くないかなと思っていたら、妄想が止めどなくあふれるあたりがさすが 才人という感じで大変面白い。食べ物本は空腹度によって評価が変わってしまう。前半は空腹時に 読んだため無性にトンカツが食べたくなった。解説の博士もかなり面白い。 サイン入りでうれしい。 ISBNついているが、書店では買えないので鉤屋で どうぞ。
前川やく「ホワイトカラーの道楽」鉤屋世界新書
この人は「ちびせん」や「ケツダイラ」でしられる「スレッジ・ハンマー・ウェブ」の 方。書き下ろし。そうかこの人は理系臭がしないからああいう感じなのかと 思った。前半はWebで想像出来るような内容だったが、 後半が意外な叙情性があってちょっと泣いた。面白い。サイン入りでうれしい。 ISBNついているが、書店では買えないので鉤屋で どうぞ。
そね・前川やく「偏愛」鉤屋
グレコローマンかたぎの方による鉤屋の 鉤屋世界新書発刊記念セットのおまけ。鉤屋賛助会員火花の会員なので 入手できた。レベル高い。
哀川翔「俺、不良品」東邦出版
面白かった。 哀川翔の偉大さは松尾スズキの「棚、持てよ」で知ったのだが、 父親が昭和42年の徳島の自衛隊の事故(ヘリと対潜哨戒機の衝突)で亡くなっていたことや、 一世風靡セピア時代は光文社の編集者だったことなどは初めて知った。 「太陽、太陽でダブル太陽よ」 すばらしい。
橋田信介「イラクの中心でバカとさけぶ」アスコム
最初に勝谷誠彦と不肖・宮嶋との対談がある。 「有名になって金儲けしたいだけ」 大変わかりやすくすばらしいと思う。 不謹慎? 昨年最もわたくしの失笑を買った、 パックツアーなみの快適さの中で不燃ゴミ投棄に憤ってる 「従軍日誌」たんより二億倍くらいましだろう。

ベトナム戦争のときにハノイ(爆撃される側)にいたという筋金入り。 西原理恵子の元ダンナの鴨ちゃんの師匠としても有名。 2年前に読んだ 「戦場特派員」も面白かったが、 これもかなり面白い。還暦過ぎて、54歳の助手と共に開戦時のイラクに潜り込み 取材したという話だが、かなり脱力する文体と、その行動の気負いの無さが 大変な魅力になっている。とにかくヒューマニズムであるとか、 政治について何一つ語ってない点はさすがだ。タイトルは失敗。
この本の中で一番こころに残ったイラクの格言

人の命は山よりも重く、
あるいは、羽根よりも軽い

すげー。

平林純「史上最強科学のムダ知識」技術評論社
3年前に読んだ「 できるかな」の hirax.netの方の本。 レベル高い。一度Webで読んでいるはずなのに、こういうのは 買ってしまう。一つは、書籍でもう一度(昼食食べながら流し読みじゃなくて) しっかり読みたいという理由だが、もう一つは、普段楽しませて もらってるWebに対しての、なんというか、エールというと偉そうで、 ドネーションという向こうが求めているみたいでまた違うのだが、 そのようなものが少し含まれている。 前回、プロっぽいとか書いたが、どうやら日記などを長く読んでいると 光学系か画像系企業のエンジニア(研究者?)みたいで、専門ライターではないようだ。 会社の同僚に対しても感じることがあるのだが、頭脳明晰な人というのは、 どんな文章も明晰なことが多い。
NHK取材班編「コミック版その時歴史が動いた 幕末編」集英社
マンガ王国ニッポンでいったいなんだってよくもこんなレベルの低い漫画を 描いてお金がもらえるなあというような思いもあるが、 西郷隆盛という人がただの愛犬家じゃないことを初めて知った。 勉強になった。

No.
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